作曲家・澤野弘之さん澤野弘之さん 画像提供:扶桑社

名作ドラマには、耳に残る音楽がつきものである。視聴者の心に残る名曲には、どんな仕掛けがほどこされているのか。『医龍』や『機動戦士ガンダムUC』のBGMを手がけた人気作曲家が、その考えを明かす。※本稿は、作曲家の澤野弘之『錯覚の音』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

ドラマ『医龍』のテーマ曲を
作るチャンスが舞い込んだ

 『医龍』の音楽制作を進めていたある日、選曲家がふと言った。「澤野くんも、テーマ曲みたいなものを作ってよ」と。僕は驚いて、「でも、テーマ曲は河野伸さんが担当されているのでは?」と聞き返した。すると彼は、「いやいや、河野さんのとは別に、君も主人公を意識したテーマ性のある曲を書いた方がいい」と言ってくれた。それを聞いて、「書いていいのであれば、書かせてもらおう」と決意した。

 せっかくテーマ曲を書くからには、自分の作る曲がメインテーマになるくらいの気概で挑まなければならないと考えた。そうした気持ちで作り上げたのが「Blue Dragon」と「spirit」という楽曲だった。

 その流れで、選曲家はさらに「今回は、歌モノの楽曲があってもいいかもしれない」と提案してきた。僕は、かねてから劇伴の中に歌の入った楽曲を取り入れたいと強く願っていたので、絶好の機会だと思った。