沸騰!エンタメビジネスPhoto:Kim Kulish, Bloomberg/gettyimages

2025年12月、これまで著作権コンテンツの学習・出力に関して激しい対立関係にあった米OpenAIと米ウォルト・ディズニー・カンパニーが「電撃提携」を行った。ライセンス契約およびディズニーのOpenAIへの出資を通じて、OpenAIがディズニーのキャラクターなどのコンテンツというIP(知的財産)を一定の合意に基づき出力することを認めたのだ。最大手コンテンツ企業がAI企業と組む予想外のこの動きは、日本企業を含むコンテンツ業界全体にどのような影響をもたらすのだろうか。連載『沸騰!エンタメビジネス』の本稿では、政府知的財産本部の委員を務め、AIと著作物版権の関係に詳しい骨董通り法律事務所の福井健策弁護士に、この動きが意味するものを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

ディズニーとOpenAI双方が「歩み寄った」今回の提携
コンテンツ業界全体にどのような影響をもたらすのか

――ディズニーがOpenAIへの出資を決め、さらにSora 2やChatGPTでの同社IPの利用を許諾しました。これまでの同社のAIプラットフォーマーへの姿勢である「自社IPの学習も出力も許さず、交渉もしない」というスタンスを180度転換した形に見えますが、法的な観点およびディズニーのこれまでのIP保護・運用政策に照らしてどう評価しますか。

福井 二通りの見方ができるかと思います。「ディズニーがこれまでの対決姿勢を転換し、OpenAIに歩み寄った」というのは事実でしょう。

 ディズニーや他の多くのコンテンツホルダーがAI企業に対してこれまで主張していたのは、自社コンテンツの無断での学習とコンテンツに類似した出力を禁止するということでした。Sora2に対しては、「OpenAIが当初提示していた『希望するIPホルダーにのみ出力時のオプトアウト(※1)を認める』というルールはそもそも存在しない」と強く主張していました。

 学習はしていいが、権利者がノーと言ったものは対象から外すという「学習時のオプトアウト」のルールは、EU(欧州連合)などが法制化しています。一方、ユーザーが類似物を自由に出力してもよく、それについて権利者はオプトアウトできるのみというルールは世界的に存在しません。これに関してはディズニーの言う通りです。

 今回のOpenAIとディズニーの合意は、「事前に許諾を得た200以上のキャラクターに対してのみ、合意した内容に従った出力を認める」という内容です。つまり許諾を得たものだけを出力できる「オプトイン(※2)」ですね。今後新規の学習は行わないという内容になった可能性もあります。

 つまり、今回の合意はこれまでは広く無断で学習を行って無断で出力し、全世界的にルール化されていないオプトアウトの選択肢を提示する、という対応をしてきたOpenAIが、「ディズニーの求める許諾に基づく利用に、一歩歩みを進めた」とも解釈できるのです。

――なぜOpenAIはこうした合意に踏み切ったのでしょうか。また、この合意を受けて著作コンテンツを保持・運用する日本のコンテンツ企業はどのような対応をすればいいのでしょうか。世界のAI企業とコンテンツ企業との争いや関係性が今後どうなってくるのか、AIと著作物の関係の今後の変化についても見立てを教えてください。そして、日本企業はこうした状況に対して、法律面やビジネス契約面でどのように対処すべきでしょうか。