アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「フランク・E・ピーターセン・ジュニア」(DDG 121)Photo:U.S. Navy/Handout,gettyimages

対イラン攻撃で米軍は1発数億円のミサイルを湯水のように消費した。兵器備蓄の急減が懸念される中、トランプ政権は事態打開に向け、軍需企業へ強硬に増産を迫る「国家資本主義」へとかじを切った。最大15兆円超の戦費投入が見込まれる中、中東への兵器転用によるアジアの抑止力低下や、財政赤字の拡大も懸念される。軍民一体の増産体制に歯止めはかかるのか。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

1発6億円超のミサイル撃ちまくった米軍
軍事衝突が長期化すれば十数兆円を消費

 米国とイスラエルが2月28日に開始した対イラン攻撃の初期段階で、米軍はミサイル兵器を湯水のように消費した。これを受けて、トランプ政権は、軍需企業を生産拡大するように強硬に介入しようとする「国家資本主義」が明確になってきた。

 国家資本主義とは、政府が経済に主体的な役割を果たし、国家主導の投資を通じて市場をコントロールし、誘導する体制を指す。

 つまり、米軍の軍事展開で兵器備蓄が急速に減り続けている中で、政権主導で強制的に兵器備蓄の回復をもくろんでいるのだ。背景には、「中東の混乱に乗じて中国にスキを突かれてはならない」というトランプ政権内における危機感の強まりもある。

 実際、米軍の軍事作戦で消費される兵器には巨額の予算が充てられている。以下、具体的に見ていくと、米軍の兵器が、とてつもない「金食い虫」であることが分かる。

 ほんの数時間で決着がついた1月の米軍によるベネズエラにおける作戦と違い、イスラエルと共同で開始したイランにおける軍事作戦において、米軍は大規模な消耗戦を展開した。

 米通信会社ブルームバーグによると、イラン軍が使用した価格が2万ドル(約315万円)の一方向攻撃型ドローン「シャヘド136」や、小型で簡易な巡航ミサイルを撃墜するため、米軍は1発400万ドル(約6億4000万円)の「パトリオット」迎撃ミサイルを開戦当初に消費した。

 米軍は、他にも在庫が限られる長距離巡航ミサイル「トマホーク」、レーダーに探知されにくいステルス巡航ミサイル「JASSM(ジャズム)」や、射程約500キロの短距離精密攻撃ミサイル「PrSM(プリズム)」などを大量に投入した。

 イランのミサイルやその発射装置であるランチャーの大半は、イスラエルや米国の度重なる大規模攻撃で破壊されたものの、開戦後3週間を経ても、生き残りのミサイルやドローンが中東各地の米軍施設を襲撃し続けている。

 米外交政策研究所(FPRI)の推計によれば、今回の米国主導の「壮大な怒り作戦」の最初の96時間だけで、米軍は弾薬やミサイル35種類で合計5197発をイランに撃ち込んだ。米戦略国際問題研究所(CSIS)は、これが37億ドル(約5900億円)の出費に相当すると推定。また、ペンシルベニア大学ウォートン校の試算では作戦が2カ月間続いた場合に、400億~950億ドル(約6兆4000億~約15兆1800億円)もの費用に膨れ上がるとされる。

 予算だけでも巨大だが、米国製の兵器は高性能ゆえに生産に時間がかかるものが多い。簡単には補充ができないのだ。

 このため、米軍の兵器備蓄には不安が生じ始めているとみられている。

 さらにそうした製品はアラブ諸国やウクライナ、そして中国の脅威と対峙する日本などアジア諸国でも切実に必要とされるものだ。短期間の在庫減少や、アジア太平洋地域から中東への兵器転用は、台湾をはじめとするアジア太平洋地域における潜在的な紛争リスクを高める恐れさえある。

4月8日から2週間の停戦で合意した米国とイランだが、同11、12日の戦争終結協議では合意に至らなかった。紛争泥沼化の懸念もある中で、軍事費の膨張にも終わりが見えない。次ページでは、兵器の受注急増が確実視される米軍需企業を明らかにする。