資金と技術さえあれば
軍隊を持てる時代が訪れる

津上 イーロン・マスクは政治の場を去りましたが、たぶん「政府は無視して俺が全部決めたほうが世の中はうまくいく」と思ってましたよね。彼が火星の次にやるのは、ヒューマノイド軍隊だというのが僕の仮説(笑)。

 大きな軍隊を作るには徴兵制度が必要で、それは国家にしかできなかったから主権国家に力があった。ところがヒューマノイド軍隊なら徴兵の制約はなくなる。中国はすでにその方向も検討していますが、「金と技術さえあれば政府でなくても軍隊を持てる時代」が来るなら、今回の挫折を踏まえたマスクが「俺は軍隊を持つぞ。それならもう負けない」みたいなリベンジを考えたりしてね(笑)。

小泉 「あのバカどもより俺のほうが絶対賢い」と思っているマスクですから、制約のない宇宙でやるかもしれない。彼は「自分が好きにやれる場所」として火星を選んだと思うんですよ。

津上 火星にマスク王国をつくりますか。

小泉 スペースⅩがやっている衛星通信サービス「スターリンク」に加入するときの利用規約には、「地球上では地球の法律に従うが、火星は自由な惑星であり……」みたいな勝手に考えた火星の秩序を元にした条項が入っています。相当ぶっ飛んだやつで、面白いっちゃ面白いけど、おっかないっちゃおっかないですね。

熊倉潤(以下、熊倉) 中国がヒューマノイドのような新しい技術に挑戦をし、大きく飛躍する明るい未来もあるかもしれません。他方で、テクノロジーを使って「中華民族の共同体」という国民国家を完成させようと考える可能性もある。例えば、私の専門の新疆ウイグルとも関連するアイデンティティ問題です。自分を「中国人」と意識していない人を改造したり、改造不能であれば排除したり……。

小泉 改造も恐ろしいですが、排除って何を意味するんですか?まさか殺されちゃう?

熊倉 国家分裂扇動罪で刑務所に入れて……。そうやって新しい時代に対応し、「中国共産党は今後も発展を続けていくのである」というシナリオもあるかもしれない。矛盾をはらみながらどうしていくのかは、本当にわからないですね。