実際、こうしたときは記憶の定着も促進されることが知られています。つまり、自発的な面白さとは、作品と自分自身の感性や興味が深く共鳴したときに生まれるのです。

自分はどっちの「面白さ」を
楽しんでいるかの見分け方

 一方、もう1つの「共感的な面白さ」は、他人とのつながりから生まれます。

 たとえばSNSで「Cという作品は最高!」と盛り上がっているのを見て、最初はそれほどでもなかったのに、周囲の熱気に触れるうちに「やっぱり面白いのかも」と感じてしまう。

 これは心理学で「社会的証明」や「バンドワゴン効果」と呼ばれる現象で、多くの人が価値を認めている対象を自分も高く評価しやすくなる傾向を指します。

 他人と同じ体験を共有すると、人は安心感や一体感を得ます。

 心理学では「社会的共感」と呼ばれ、脳の報酬系がやはり活性化しますが、ここでは自発的な「面白い」と違い、脳の別の部分が反応していると言われています。扁桃体や前帯状皮質など、情動や対人関係に関わる部位が強く関与していると考えられているのです。

 また、社会的影響を受ける場面では「記憶が書き換えられやすい」傾向があることも研究で示されています。

「周りで面白いと言っていたモノ」を楽しんだ経験は忘れやすいということです。つまり、自発的な面白さと共感的な面白さは、どちらも「楽しい」という外見は同じでも、その裏で働く脳の仕組みや記憶に残る経験は異なっているのです。

 さて、この2つを見分けるにはどうすればよいか?自分はどちらの状態で「作品」を楽しんでいるのでしょうか?見分け方は実は簡単で、先ほどの作品A、Bを論じていた2人の会話に現れています。

「共感的面白さ」を求めている人は、自分の推している作品を受け入れてもらえないことにかなりの不快を感じます。社会的な一体感で脳が報酬を受けているので、それが達成できないと「どうして共感してくれないんだよ」と脳が不満を感じるわけです。

 一方「自発的面白さ」を求めている人は好きな作品を否定されても平気です。