『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第61回では株主間のトラブルの影響について解説する。
裏切り者の「あるある」言い訳
上場を機に、優秀な中途人材が続々入社するアパレル企業・T-BOX。主人公でT-BOX代表の花岡拳は、幼なじみとして心を許す仲である秋田の工場責任者・木村ノブオ(ノブ)と2人で話し込む。
カタログ通販やネット通販が好調なものの、古参メンバーで経理の菅原雅弘が大手銀行出身の中途社員に立場を奪われて退職を申し出てきたこと、同じく古参で営業系を取り仕切る大林隆二も影響力を失いつつある結果、ストレスをためている。花岡はノブにそう語る。
2人が問題を起こさないかと心配するノブをよそに、花岡は秋田弁で「なもしね。放っとぐ」と返す。そして「まわりに悪知恵をつけてたきつけるヤツが現れれば分からないが」としつつ、特に手を打たないことを明言するのだった。
だが、ノブの心配は杞憂では終わらない。大林と菅原は、ライバル企業である一ツ橋商事の井川泰子との食事の席をセッティング。先んじて井川とコンタクトを取っていた生産部門の片岩八重子(ヤエコ)とともに、クーデターの計画を本格化する。
ためらうヤエコに、大林は「これは裏切りじゃない。飛躍のための新しい価値の創造。歴史を新たに切り拓くための破壊的前進」と説く。
買収やクーデターの火種とは?
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
どんな会社にも不満をため込む古参メンバーはいる。だが多くの場合、それは社内の愚痴や派閥争いで終わる。厄介なのは、その不満を利用する外部者が現れた時だ。その瞬間に、「不満」は経営者にとって面倒な「トラブル」へと変化する。
これが上場企業ではなおさらである。役員や古参社員の不満は、単なる人間関係のもつれではなく、株式を持つ当事者間のトラブルとなる。漫画のように競合や大株主と結びつけば、買収やクーデターの火種にもなりうるのだ。
現実の上場企業でも、こうした構図は珍しくない。化学メーカーの太陽ホールディングス(太陽HD)では、2025年に筆頭株主のDICが社長再任への反対を公表した。この反対表明は太陽HD側にはサプライズだったと報じられた。
その後、DICは2026年3月末にはプライベートエクイティ(PE)であるKKRによる買収と非公開化に賛同、太陽HDとの資本業務提携も解消する方針が伝えられている。安定株主だと思っていた外部者が、ある局面では経営を揺るがす側に回る。上場企業では、そうした転換が現実に起きる。
渋るヤエコを「パリコレでショー開くのだって夢じゃない」「買収したとしても、すぐトップ交替は要求しない」などと言いくるめ、井川はT-BOXの株式を持つ大林、菅原、ヤエコと手を組む密約を結ぶ。
だが井川はそんな3人に対しても「使うだけ使ったら捨てちゃえばいいだけのこと」とほくそ笑む。たくらみの行方は次回以降に明らかになる。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







