直美vs玉田 翻訳合戦

 バーンズ先生から「NOTES ON NURSING」という本と手紙が今朝、スコットランドから届いた。

 手紙には英語でこう書いてあった。

「私が到着するまでに、最後の章の意味を理解するまで読みなさい。それが私の最初の授業です」

 本は2冊、同じものがあり、7人で仲良く順番に読んでいくことになる。

 そこで判明したのは、バーンズ先生は日本語が話せないという事実であった。

 授業は英語だと知って動揺する者もいれば、英語のみならずドイツ語も習っていて余裕のある者もいる。

 直美もここでは鼻が高い。「私も英語をずっと学んできました」

 英語がわかる人、わからない人がまんべんなく2班(りん、直美、工藤/玉田、泉、東雲、柳田)に分かれて「NOTES ON NURSING」をさっそく読み始め、それぞれの班が訳を話し合う。

 最初の章は「ナースとは何か」。直美は「この本に書いてあることは看護を味気ないものにしてしまったかもしれないね」とざっくり訳す。

 一方、玉田は「厳密にいうと、この書は看護というものから、詩のごとき美しさを取り去り、人間の業(わざ)の中で最も味気ないものにしてしまう、という人もあるかもしれません」と細かく訳す。

「会話と学問の英語は違いますから」と玉田がマウントをとり、また空気がぎすぎすする。

 直美と玉田の対立は続く。

「The very alphabet of a nurse」をどう訳すか。玉田は「はなはだABCってどういうこと?」と悩む。

 直美は「看護婦のいろは」「看護婦の基本」と訳し「ざまーみろ」と悩む玉田を小馬鹿にする。

「頭の固い人には訳すの難しいだろうね」

「それを教えてあげればいいじゃないですか」とりんがたしなめると、「みなしごの私からなんて教えてほしくないでしょ。奥医師のお嬢様は」とけんか腰。

 りんはそんな直美が「髪と一緒にいろいろ断ち切ったって、そう自分に嘘(うそ)ついてるみたいで。かえって疲れそう」だと指摘する。また思ったことを空気を読まずにしゃべる悪い癖が出た。

「あ、間違えた」と思ったときにはすでに遅く、直美は「でれすけ」とぷいっと部屋を出てしまう。

 前途多難。

 東雲の元同級生がすれちがいざま、東雲に嫌味を言うなんてこともあった。元同級生の家は女学校設立の時から寄付をしているから、校長に言いつけられても心配は要らないようで、家の威光をかさに着ている。会う人会う人、マウント合戦で、りんじゃなくても疲れそう。

 次々と女性たちのギスギス会話を書く脚本家・吉澤智子さんは、女性たちのこういう会話にこそリアリティーがあると意識的に書いているようだ。第1週の試写会見のときの囲み取材でこう言っていた。

「私が一視聴者だったとき、女性同士のドラマの会話にちょっと違和感がありました。男性の作り手の女性に対する願望がドラマの中にある気がずっとしていて。

 ふだん女同士で会話しているとき、そんなにきれいな言葉を使わないし、きれいごとを言わない。『で?』とか『そんな話、つまんない』とか相手の話の腰を折ることもあります。

 女の人同士では仲が良ければ良いほど、辛辣(しんらつ)だったり、本音になったり。端から聞いていて、きつい、と思うようなことが言えるぐらいにならないと女性同士は仲がいいとはいえないと思うんです。

 朝ドラの視聴者には女性が多いので、これ、私とお友達の話だわと思ってもらえるような会話に挑戦しています」

 確かに、仲がいいとずばずば言いたいことを言い合うようになることもある。仲良し同士の本音トークとそうでないマウント合戦とのきつさの違いを書き分ける挑戦はおもしろいかもしれない。今後に期待したい。

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