トレーサビリティーで特許取得、1兆円市場の開拓へ
――トレーサビリティーをどのように管理していますか。
山上 トレーサビリティーは古木の商品化にとって欠かせない条件です。当社は独自にトレーサビリティーシステムを構築し、1本1本の古木が持つ情報の管理を行って流通過程を可視化しました。
サイズや形状、樹種、入手地、経歴、保管状況などの情報がシステム上にデータとして蓄積されることで履歴がスムーズに証明でき、検索や比較検討が常時可能です。
二次元コード付きNFCチップを実装した「古木」。形状や樹種、入手地、および、オーナー履歴が電子情報化されている。トレーサビリティ-システムとして特許を取得 写真提供:山翠舎拡大画像表示
2024年には古木のトレーサビリティーシステムに関する「情報処理装置」として特許も取得しました。
それぞれの古木に実装した二次元コードとNFCチップには古木の詳細情報が記録されています。二次元コードでサイズや形状、樹種、入手地を、NFCチップからは、オーナーの履歴をそれぞれ読み取ることが可能です。
NECチップはブロックチェーンの仕組みを採用しているため、将来的にもその古木の次のオーナー、またその次のオーナーと新しい歴史を刻むたびに履歴が残されていきます。
――古木規格のデータ化による流通促進の次は、どのような事業展開を考えていますか。
山上 古木市場の潜在規模は極めて大きく、近い将来「1兆円市場」になるポテンシャルを秘めていると考えています。
現在、日本には約900万戸の空き家があり(※2)、今後も増加の一途をたどっていくでしょう。そこには価値が見いだされないまま眠っている古民家も多く含まれています。
背景には、所有者が空き家をどうすべきか悩んだものの、経済的な事情などから結果的には放置されたまま、という現状があるのではないでしょうか。
ならば、有効に使ってくれる人に譲渡できればよい。住居として維持できないなら商業施設として投資家に所有権を購入してもらい、飲食店やホテルなどに再生して運営はその道の専門家に任せる。山翠舎は投資家と運営のプロのつなぎ役になりたいと思います。
現在当社は、再生古民家を活用する分散型ホテル(※3)の運営プロジェクトに参画し、投資家と運営者を分離した経営を可能にするプラットフォームを構築、両者を結ぶ「継手ソリューション」の担い手として、事業の多角化を進めています。
こうした事業を通じて、時間を経るほどに生活の価値が向上する社会づくりを標ぼうする「古民家ルネサンス構想」の実現に尽力して行きたいのです。
■山上浩明(やまかみ・ひろあき) 株式会社山翠舎 代表取締役社長

1977年、長野県生まれ。2000年、東京理科大学理工学部卒業、ソフトバンク株式会社入社。05年、株式会社山翠舎入社。12年より現職。21年、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)
■株式会社山翠舎 本社・長野県長野市、支社・東京都渋谷区
1930年、長野県長野市で現社長・山上浩明氏の祖父・松治郎氏が建具屋「山上木工所」を創業。70年、浩明氏の父・建夫氏が事業を継承し住宅など一般建築の施工に事業を拡大、法人化。社名を「株式会社山翠舎」に変更。2006年、古木買い取り事業を開始。
【特許】木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法(2022年)、古木のトレーサビリティーシステムに関する情報処理装置(2024年)
【登録商標】「古木(こぼく)」「KOBOKU」(2018年)、「Re古民家」「恵美寿柱」(2020年)、「古民家ジャッキアップ再生」「SANSUI」(2023年)、「古築」(2025年出願)ほか
【第三者機関認証】FSC CoC認証(森林管理協議会、2019年)、エコマーク(日本環境協会)ほか
photo by K.H
※2 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(総務省)
※3 地域に分散する古民家などに客室やフロント、レストランなどの機能を持たせ、周辺一帯を一つの宿泊施設として運営する形態。宿泊客に域内の回遊を促す効果などが注目されている
「山翠舎・山上浩明代表取締役社長に聞く(下)」に続く







