市場拡大のために必要な「職人技のデータベース化」

――品質の担保は重要ですが、職人の経験値によるところが大きいと市場拡大が進みにくいのではないでしょうか。

山上 古木事業の構造的な課題として属人性があります。同じ材料が二つとない特性上、確かに、用途適性や価値などの判断は職人の目利きに依存することとなり、人材育成にも時間がかかるため、古木市場を拡大する上でのボトルネックになります。

 そこで、職人の知見を木の使用年代や強度、用途適性、表情といったカテゴリーごとに分析・分解してデータベース化し、社内で知識の標準化と共有を図りました。 

3D大学の研究室と共同で「古木」専用の3Dスキャニングシステムを開発。在庫のデータ化が加速 写真提供:山翠舎
拡大画像表示

 さらに、京都工芸繊維大学の木内俊克研究室と共同で、このほど古木専用の3Dスキャニングシステムの開発に成功しました。世界で唯一の古木専用スキャニングシステムであり、6mの古木を3分で計測、誤差は3㎜。曲がり具合やほぞ穴、色も含めて全方位からの立体的捕捉が可能です。

 これによって、長野県の倉庫にある約5000本の古木在庫のデータ化を一気に加速する計画です。計測データをクラウドに蓄積しておくことで、海外からの要望にもわざわざ長野まで来ていただくことなく応じることができます。

 あるいは、ビルのテナントなど規格が完全に決まっている空間に店舗を造る場合でも、古木の品質や形状の詳細なデータがあることで、古木を中心に内装を設計することが可能になります。

 建築・施工の世界では、図面に従って、規格化された工業製品で内装を組んでいくのが一般的であり、個々で規格の異なる素材は敬遠されがちなのですが、古木の3Dスキャニングシステムで建築設計の進め方も変えられるかもしれません。