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AIの爆発的な普及により社会構造は大きな転換点を迎えている。AIに仕事を奪われるホワイトカラー、AIが消費する膨大な電力の確保に奔走する事業者。3者の関係には明確な支配関係が存在する。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、転換しつつある社会構造の中で誰が誰を支配しているのか、実情を徹底解説する。(アクセンチュア素材・エネルギー本部マネジング・ディレクター 巽 直樹)
AI普及で電源確保が急務
市場では「SaaSの死」が発生
米国では、人工知能(AI)の普及に伴うデータセンター(DC)の電力需要急増に対処するため、閉鎖予定の石炭火力に稼働継続命令を出す異例の事態が起きている。これについては前回、その緊迫した状況を述べた(2026年2月3日配信『【石炭火力発電】日本は「サプライチェーン崩壊」懸念!米では復興、中印は拡大…脱炭素・エネルギー安保・データセンター需要の狭間の“現実解”を専門家が提唱』参照)。
だが、DC向けの電源確保はそれだけにとどまらず、チキンレースはさらにヒートアップしている。ボーイング747に搭載されていたジェットエンジンを天然ガス発電タービンに改造し、DCに据え付ける――。そんな冗談のような光景が現実化しているのだ。電力系統への接続に何年も待つことができないDC事業者が、退役航空機のエンジンを活用して「Shadow Grid(影の送電網)」を自前で構築し始めている。
一方、26年1月30日、米新興AI開発企業のAnthropic(アンソロピック)がエージェント型AIプラットフォーム「Claude Cowork」のプラグイン群を公開すると、週明けの2月3日にはSaaS(Software as a Service)企業の約2850億ドル(約43兆円)の株式時価総額が一日にして蒸発した。ホワイトカラーの中核業務を汎用AIが代行できると市場が悟った瞬間、「SaaSpocalypse(サースポカリプス:SaaSとApocalypse〔黙示録〕を掛け合わせた造語)」、いわゆる「SaaSの死」と呼ばれる暴落が起きたのである。
知的労働の自動化が、「いつか来る未来」から「いま起きている現実」へと転換した。ホワイトカラーの役割を根底から揺さぶる「ターミネーター」が放たれたともいえるが、問題はこのターミネーターが途方もない量の電力を食い尽くすことだ。
今、人類は電力大食漢に対して、せっせとエネルギー資源を貢いでいる構図になってはいないか。
次ページでは、爆発的なAIの普及の裏で、電源確保に奔走するエネルギー供給者の実情をさらに深く掘り下げていく。







