そこで試されるのは、「プレゼン力」ではなく、もっと地道で泥臭い日々のコミュニケーション力。さまざまな事情やお互いの意向の違いを乗り越えながら、プロジェクトを前に進めていかなければならないからです。

 このように、人と人が関わり合い、困りごとを一緒に解決する普段の仕事で必要になるのは、圧倒的に「聞く」から始まる地道なコミュニケーションのほう、というのが、広告会社で働き始めて20年が過ぎた私の実感です。

 拙著『こうやって頭のなかを言語化する。』(PHP研究所)でも、「言語化力のベースは『聞く力』にある」と書きましたが、自分の頭のなかを言語化する以外にも「聞く」がビジネスに効果的であることを解き明かしたい。それが『聞き出せる人が、うまくいく』(祥伝社)を書こうと思った動機の1つです。

その人らしい働き方を支援する
キャリアコンサルタントの仕事

 もう1つ、私が「聞く」ことを大事にするようになった理由は、2023年に国家資格「キャリアコンサルタント」を取得したことが関係しています。

 キャリアコンサルタントは、単に就職や転職の相談を受けて仕事を紹介するだけではなく、その人が自分らしいキャリアを築けるように支援する専門家です。

 具体的には、キャリアカウンセリングという相談を通じて、その人が抱えている仕事や人生の悩みを丁寧に聞き、本人の強みや価値観を整理したり、今後のキャリアプランを一緒に考えていきます。

 一般的なカウンセリングに近い側面もありますが、あくまで仕事やキャリアにフォーカスしているのがキャリアコンサルタントです。

 キャリアコンサルタントは国家資格ですから、取得するにはそれなりに勉強が必要でした。仕事をしながら、数カ月間、専門の学校に通って養成講習を修了して受験資格を得た上で、学科試験と実技試験の両方に合格して初めてキャリアコンサルタントと名乗れるようになります。

 コピーライターとして働きながらの通学や試験勉強は、決して楽なものではありませんでした。

 では、なぜそこまでしてキャリアコンサルタントの資格を取得したのか。コピーライターを辞めて、人事系の仕事に就きたかったからではありません。