じつは、あるきっかけがあったのです。

 今私が勤めている会社には、社員なら誰でも無料でキャリアカウンセリングを受けられる仕組みがあります。数年前、たまたま社内の掲示板に出ていたその情報を目にした私は、何の気なしにカウンセリングを受けてみることにしました。

 1時間ほど、担当のキャリアコンサルタントに当時抱えていた仕事の悩みを話してその時間は終了したのですが、その時に一番印象に残ったのが、カウンセリングの体験ではなく「キャリアカウンセラーの仕事は、コピーライターの仕事とすごく似ている!」という発見だったのです。もちろん、カウンセリングの時間そのものも非常にためになりました。でも、それ以上に、キャリアコンサルタントの仕事そのものに興味が湧いてしまったのです。

 気づけば、キャリアカウンセリングを受けた翌週には資格取得のための学校の申し込みを済ませていました。今ふりかえっても、何がそこまで自分を突き動かしたのかはよくわかりません。ただ、「“聞くこと”に特化したキャリアコンサルタントの資格を勉強すれば、コピーライターの仕事にも絶対に活かせるはずだ」という確信があったのです。

相手の心の中にある“答え”を
掘り起こすカウンセリング

 このように、半ば勢いで学び始めたキャリアコンサルタントの仕事ですが、基本的にはカウンセリングでクライエント(相談者)の話をじっくり聞くことからすべてが始まります。

 たとえば、転職をしようか悩んでいるクライエントがいた場合。

 そもそも転職の目的は何か、転職を考えるようになった出来事は何か、そこで何を感じて転職を検討するようになったのか、今後のキャリアパスをどう描いていきたいと考えているか―。

 他にも、クライエントが抱えるさまざまな悩みを丁寧に聞いていきます。しかし、話を聞いた上で「じゃあ、こうしましょう」とキャリアコンサルタントがすぐに道筋を示してあげるわけではありません。悩みに対する解決策を出すのではなく、悩みに丁寧に寄り添うこと。それがキャリアコンサルタントの基本姿勢だからです。

『聞き出せる人が、うまくいく。』書影聞き出せる人が、うまくいく。』(荒木俊哉、祥伝社)

 答えは常にクライエント自身のなかにあるものであって、本人も気づいていないその答えを言葉にしてもらうこと。それがキャリアコンサルタントの大切な役割なのです。

 相手のなかに、すでに答えはある。

 その答えを聞き出しながら言葉にするためのサポートをする。

 キャリアコンサルタントの「聞き出す技術」を身につければ、畑違いのコピーライターという仕事にもきっと役立つはずだと思った理由はまさにここでした。

 相手のなかにある答えを見つけるために、クライアントにどう関わっていくか。その時に、「聞く」という力は、あらゆる仕事で大事になってくる力だと私は思います。