聴衆写真はイメージです Photo:PIXTA

コミュニケーションで成果を上げるカギは「聴衆理解」にある。ただ話すだけでは意図がうまく伝わらず、相手の背景、価値観、関心を深く理解することで共感を得てこそ、信頼を築く道が開けるというものだ。国内のビジネスリーダーに向けて最先端のリーダーシッププログラムを提供する筆者が“相手本位”のプレゼン・交渉の極意を説く。※本稿は、黒川公晴『ミネルバ式 最先端リーダーシップ 不確実な時代に成果を出し続けるリーダーの18の思考習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

話す前の「聴衆理解」が
コミュニケーションで最重要

 コミュニケーションというと、傾聴したり、説得したり、大勢の前でプレゼンテーションを行ったり……というシーンを連想しますが、最も重要なのはその前段階、いかに「聴衆理解」(audience_awareness)を実践できているかということです。

 私が外交官時代、交渉や要人の通訳は「事前準備で勝負が決まる」と言われていました。ロジカルに話したり、流暢に自分の考えを表現したり、発声を鍛えたりする前に、まずは相手のことを深く理解することが、コミュニケーションの成否を大きく左右します。

 聴衆を理解する重要性と利点は複数の観点から考えることができます。

 聴衆理解が重要である最も大きな理由の1つが、メッセージ内容の調整ができることです。伝達するテーマは同じだとしても、相手によって用いるべき表現は異なり、伝わり方も変わります。

 たとえば、あなたがあるプロジェクトの責任者として、複数の社内関係者に対し、そのプロジェクトの重要性を理解してもらわなければならない立場にあるとします。聞き手の背景や関心事、知識レベルへの理解を踏まえながら、語彙や表現をどのように変える必要があるでしょうか?次の例を見てみましょう。