ミニスカートの女性が性被害に遭った→女性が悪い?少年院の子どもたちの意外な価値観【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第11話「価値観ゲーム」から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

人はどのようにして自分の考えに気づき、変わっていくのか

 幼女への性加害によって少年院に収容された出水亮一(仮名)は、院内で性加害防止プログラムを継続して受けています。マンガでは、その中で行われている『価値観ゲーム』というワークが描かれています。

 価値観ゲームは、人にはさまざまな考え方があることを知り、その中で自分自身がどのような価値観をもっているのか、その考えは本当に妥当なのかに気づくことを目的としたワークです。

 単に「性加害はしてはいけない」と教えられても、少年たちは簡単には変わりません。表向きは理解したように見えても、内心では「女性も悪い」と他罰的・被害的になっていることもあります。少年たちが変わるために必要なのは、「教えられること」ではなく、「自分の頭で考えること」なのだという現場の実感が、今回の話の背景にあります。

 このワークでは、答えの決まっていない問いが出され、グループになって意見を出し合います。たとえば「生まれ変わるとしたら、男がよいか、女がよいか」という問いでは、単なる2択ではなく、0~100%の幅をもたせて考えさせます。他者の意見を聞くことで、自分の考えが揺れたり変化したりする体験そのものが、重要なねらいです。同時に、固定観念の強さや思考の柔軟さも浮かび上がってきます。

 物語の中では、性加害に直接関わる問いも扱われます。深夜の夜道でミニスカートをはいていた女性が性被害に遭った場合、その女性にどの程度の責任があるのかを、0~100%で考えさせる場面です。

 最初は教官の目を気にして「女性は全く悪くない」と答えていた複数の性非行少年たちも、他の少年の考えや意見を聞くことで、自分の考えに迷いを感じ始めます。そこには、性の問題に対してだけでなく、自身の価値観や思い込みも映し出されます。このワークの目的は正しい答えを知るということではなく、『自分の歪んだ考え方に気づくこと』なのです。

 意外だったのは性非行少年たちが必ずしも被害女性の方が悪いと強く思っているわけではなかったことです。むしろ教官の方が、そう思っている割合が高かったこともあったくらいです。

 ここではその解釈までは述べませんが、マンガでは、こうしたワークを通して、「人はどのようにして自分の考えに気づき、変わっていくのか」という問いを描いています。性加害防止プログラムの一場面を通して、更生とは何か、そして本当の意味での学びとは何かをみなさんにも考えていただければと思います。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社