どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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「ゼロ」から始まるより、
「途中」から始まるほうが燃える理由
新しく作ったスタンプカード。よく見ると、最初の数個が「新規入会特典」としてすでに押されていたり、有効期限が近いスタンプが、最初からおまけされていたりすることはありませんか?
「あと数回で貯まるなら、また行こうかな」「せっかくここまで貯まっている(ことになっているんだ)し、もったいない」真っ白なカードを渡されるよりも、少しだけ進んだ状態のカードを渡された瞬間に、通い続ける意欲が湧いてしまった経験があるはずです。
実は、この「おまけのスタンプ」は、お客様の脳に「ゴールが近い」という感覚を与え、リピートの速度を劇的に加速させるための、非常に巧妙な販促戦略なのです。
ゴールが見えると足が速まる(目標勾配効果)
人は、目標に近づけば近づくほど、それを達成しようとする行動が活発になる性質を持っています。これを心理学で「目標勾配効果」といいます。
「10個貯める」という目標に対し、0から始めるのと、最初から3個押された状態で「実質あと7個」から始めるのでは、後者の方が圧倒的にゴールを近く感じます。
最初の一歩(開始のハードル)を店側が肩代わりすることで、お客様は「すでに進行中のプロジェクト」に取り組んでいる感覚になり、次回の来店確率が飛躍的に高まるのです。
「もったいない」という心理を育てる(サンクコスト効果)
もう一つの狙いは、お客様に「すでに投資した」という感覚を持たせることです。
これは、「エンダウメント効果」を応用したものです。自分でお金を払って手に入れたものでなくても、一度「自分のもの」になったと感じた瞬間から、人はそれを手放すことへの強い抵抗感を覚えます。
「ここで他のお店に行くと、この3個分のメリットを捨ててしまうことになる」という損失回避の心理が働くことで、競合店への目移りを防ぎ、自店への継続的な来店を促すのです。
他のお店でも使える「進捗の可視化」設計
この「途中から始める」仕掛けは、デジタル・アナログ問わず応用可能です。
・美容室・エステ:初回来店時に「2回目、3回目の優待チケット」をセットで渡し、「3回で完成する理想の髪質(肌質)」というロードマップを提示する
・ECサイト・アプリ:プロフィール登録を「20%完了」と表示し、簡単な入力を済ませるだけで「80%まで完了しました!」とゴール直前であることを強調する
・学習塾・スクール:受講開始時に、全カリキュラムが記されたシートの「基礎編」をあえて完了扱いにして渡し、「あなたはすでにスタートラインを超えている」と自信を持たせる
まとめ
スタンプを最初におまけするのは、単なるサービスではありません。
・「目標勾配効果」により、心理的なゴールまでの距離を縮めて再来店のペースを上げる
・「エンダウメント効果」により、カードを手放すこと(離脱)への心理的抵抗を生み出す
・継続行動への意識を高め、「通い始めた自分」というセルフイメージを定着させる
という、お客様の「継続の意志」を物理的な印影によって強力にサポートするための販促戦略なのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




