「何となく居心地がいい」が
高リピーター率につながる

書影『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』(上阪徹著、河出書房新社、税込1870円)

 本書は、設備が充実している、おいしい料理が食べられる、といった、通常のホテルガイドとは一線を画す。ホテルそのものではなく「人」を描いている。「人」こそが、このホテルの最大の魅力なのだ。

 もちろん、このホテルの設備や料理が劣っているということではない。むしろそれらは、名門ホテルにふさわしい最上級のものだ。

 最高のおもてなしを実現するためのルールや仕組みも多数ある。

 例えば、営繕係は、画家とエンジニアがペアとなって館内を巡り、設備の細かなところをチェックし、直していくそうだ。また、「廊下に清掃カートを置かない」というルールもある。宿泊者を興醒めさせないためだという。

 こうしたルールを全てのスタッフが自ら進んで守る。それとともに、宿泊客に最高の体験をしてもらうために何をすればいいかを自分で考え、行動する。その積み重ねが高いリピーター率につながっているのだろう。

 同ホテルのバー&カフェ「カメリア」でバーテンダーを務め、本書掲載時にはゲストラウンジ「アトリウム」のマネージャー職にあった大野琢治さんの言葉も印象的だ。

「何も感じないけど、なんとなく居心地がいい。見てくれているのかもしれないけれど、感じさせない。それが最高のサービスだ」

 見ている、と感じないけれど、見てくれている、という絶妙のサービスを目指しているという。

 ぜひ本書で、名門ホテルが醸し出す「居心地のよい空気感」を味わいつつ、ホスピタリティの本質を読み取っていただきたい。