◆天才が就活で送ったレジュメが、あまりに現実的すぎてグサッとくる
悩んだら歴史に相談せよ『リーダーは日本史に学べ』の著者が、舞台を世界へ広げたリーダーは世界史に学べ。東京大学・羽田 正名誉教授の監修のもと、世界史に名を刻む35人の言葉から、現代のビジネスに必要な「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く術を解説する。

「私を雇えば得をしますよ」500年前のダ・ヴィンチに学ぶ、現代でも通用する“最強の提案術”Photo: Adobe Stock

「求められるもの」に応じて創造する
“応答型の天才”ダ・ヴィンチ

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519年)は、フィレンツェ共和国のヴィンチ村で生まれたルネサンス期を代表する芸術家。「ダ・ヴィンチ」という呼び名は、この出身地に由来している。ミラノ、ローマ、ヴェネツィアなどイタリア各地で画家としてのキャリアを築き、晩年はフランス王フランソワ1世の手厚い庇護を受けた。代表作である『モナ・リザ』や『最後の晩餐』は、時代を超えて今なお世界中で愛されている。その才能は芸術の枠にとどまらず、科学的な創造にも長け、現代のヘリコプターや戦車、さらには計算機や太陽エネルギーの活用に通じる先進的なアイデアを数多く構想した。「万能の天才」という称賛にふさわしい人物。

求められるものに応える「応答型の天才」

レオナルド・ダ・ヴィンチといえば、空想の中で自由に発想を広げる「孤高の天才」というイメージがあるかもしれません。しかし実際のダ・ヴィンチは、自分の能力を社会にどう役立てるかを常に模索し、時代のニーズに応じて創造する「応答型」のクリエイターでした。その姿勢が最も顕著に表れているのが、ミラノ公へ送った自薦状(レジュメ)です。

「私には、兵器を発明する秘密の技術があります。もし採用していただければ、いつでもその効果をお見せしましょう。平和な時代には、建築や運河の建設において、誰にも引けを取らない仕事をいたします。また、彫刻や絵画においても他の誰より優れており、一族の栄光を記念する青銅の馬を制作することも可能です」

この自薦状は単なる自己アピールではありません。「あなたのために何ができるか」という、極めて実践的な提案だったのです。ダ・ヴィンチが実際に生み出した構想や創造物を、この自薦状の言葉に沿って見ていきましょう。

時代が必要とした「軍事技術」への貢献

「私には、兵器を発明する秘密の技術があります」

ルネサンス期のイタリアは、都市国家同士の争いが絶えない時代でした。パトロンを得るためには、芸術家であっても軍事的な貢献が不可欠だったのです。ダ・ヴィンチはこの現実を冷静に受け止め、数々の独創的な兵器を構想しました。

多弾薬投射装置:着弾時に破裂する仕組み
機関砲型装置:複数の砲身を備え、連続射撃を可能にする車輪付きの装置
巨大な弓型兵器:視覚的にも人間を威圧する設計
白兵戦用武器:独自の設計による斧、槍、刀など

これらの多くは当時の技術では実用化が困難でしたが、その設計思想には、現代にも通じる「先を読む力」と「技術への深い洞察」が凝縮されています。