この見た目と中身のズレこそが、彼の作品の大きな特徴です。それは、まるで資本主義社会が行き着いたアメリカのエンターテインメントや消費社会の虚構性を暗示しているかのようです。

 アメリカの娯楽産業や消費文化は、莫大な資金を投じてつくり上げられる華やかな世界です。ディズニーやハリウッド映画といったコンテンツは膨大な資本のもとに成立し、世界中の人々を魅了してきました。それらは徹底的につくられた世界であり、膨らみ続ける消費社会のシンボルです。

 クーンズの作品に漂うある種の「バカバカしさ」は、資本主義が爛熟したアメリカ社会の象徴でもあるのでしょう。

クーンズの作品を
誰が買っていたのか

 こうした「バカバカしさ」を理解し、楽しんでいるのがアメリカ東海岸の超富裕層のコレクターたちです。資本主義の権化である彼らの間には、プライベートジェットやハイブランドなど贅沢品の所有にとどまらず、どれだけユニークで特異なものにお金を費やせるか、という衒示的消費を楽しむ文化があります。

 クーンズの作品は、いわば消費社会の極致にある富裕層の遊びの象徴であり、それを所有すること自体が彼らのステータスとなっているわけです。

 多くのコレクターがクーンズの作品を好んで購入するのは、クーンズの作品に「超富裕層のVIPコミュニティ」に参加するための一種の会員証のような働きを期待しているからかもしれません。それにプラスして、作品が成熟した資本主義社会の虚実を皮肉にも表しているからでもあるでしょう。クーンズの示す「痛みを伴うような享楽主義的世界」が、どこか超富裕層が行き着いた夢と現実が交差する世界を表しているのではないかとも思えるのです。

ただのバナナが1800万円!?
価値はどこに宿るのか

 もうひとり、資本主義の矛盾や現代アートの本質を炙り出す作品をつくり続けている作家を紹介しましょう。それが、イタリア人の現代アーティスト、マウリツィオ・カテランです。