春治さんの妹(礼二さんの叔母)は幼少期から体が弱く、長期間入院していた時期もありました。春治さんは兄としてふびんに思い、受取人を妹の名前にして生命保険を契約していたのです。しかし春治さんは、受取人が礼二さんになっているものと、いつの間にか思い込んでおり、その事実をすっかり忘れていました。

 礼二さんは「このままでは保険金は叔母のものになる。相続税対策にはならないのでは」と心配しました。そのため、春治さんは妻の喜久子さん(仮名・70歳)とともに、税理士が開催していた相続相談会に足を運びました。

受取人が「相続人以外」だと
何が起きるか

 被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税法上「みなし相続財産(※)」として課税対象となります。ただし受取人が法定相続人であれば、次の非課税枠が適用されます。

【生命保険金の非課税限度額(相続税法第12条)】
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

 今回のケースでは喜久子さんや礼二さんが保険金を受け取れないだけではありません。

 法定相続人が2人(喜久子さん・礼二さん)であれば、非課税枠は1000万円となり、保険金の全額を非課税にできます。受取人が喜久子さんや礼二さんであれば、この保険金に相続税は課税されません。

 しかし受取人が兄弟姉妹(法定相続人ではない)の場合、この非課税枠は一切適用されないのです。

 そのため、このまま春治さんに万一のことがあれば、法定相続人ではない妹が死亡保険金を受け取ることとなり、1000万円全額が課税対象となってしまうのです。

(※)「みなし相続財産」とは
被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、亡くなった人の遺産(預貯金や不動産など)そのものではなく、受取人固有の財産とされます。そのため遺産分割協議の対象にはなりません。しかし、「死亡を原因として取得する財産」であることから、税法上は相続財産とみなされ、相続税の対象となります。これを「みなし相続財産」といいます。