そのスマホ依存対策、ほぼ効果なし!

――でも実際にスマホ対策をしてみましたが、あまり意味がありませんでした。

戸田:それは多くの方が経験していることです。「ほとんど効果がない」のに、多くの人がやってしまいがちな対策、というのがあるので。

「夜は絶対に見ない」と心に誓ったり、「1日1時間まで」と決意したりすること。誰かに宣言するのも、実はあまり意味がありません。

――たしかに、やったことがあります。どうして、効果的じゃないのでしょうか。

戸田:人の行動は「決意」や「意識」でなく、自分を取り囲む「状況」でだいたい決まるのですが、それらの対策は「状況」を何も変えていないからです。目の前に強烈な誘惑がある状況で、気合いだけで耐えつづけることは、誰にもできません。

 イメージしてみてください。あなたはダイエット中ですが、目の前に「よだれが出るほど美味しそうなケーキ」が置いてある。手を伸ばせば、2秒で食べられる状態です。

「絶対に食べない」と決意している。でも、その状況が24時間続いたらどうでしょうか。

――無理ですね。どこかで必ず食べちゃいます。

戸田:「スマホを見ない」と決意している人は、これと同じことをしています。「今すぐ見たい」と、よだれが出ている状態で、自分の意志だけで耐えようとしている。最初から負けが決まっている戦いです。

 でも、もしそのケーキが箱に入れられて紐で縛られ、冷蔵庫の奥深くに隠されていたらどうでしょう? すこしは手を出す可能性は下がりそうですよね。

 このようにアクセスするまでの「障壁」を増やすことが重要です。障壁が大きいほど、途中で踏みとどまれる確率が高まります。

 例えば、手軽で有効な方法のひとつが、動画アプリの「自動再生機能」をオフにすることです。オンのままだと「次の動画を始める」までに何の障壁もなく、勝手に始まってしまいますが、オフなら「自分でタップする」という一手間が必要になります。

あなたが悪いわけじゃない。デフォルト設定のままだとやめられない

――それだけで、変わるものですか?

戸田:もちろん自動再生だけでなく、ほかにも方法はありますが、どれも小さなことです。しかしそういった小さな対策でも、人の行動はたしかに変わります。

 アプリを開発していて強く思うのは、「人の行動は気づかないうちに変えられている」ということです。自動再生機能を含め、スマホやアプリの設定がどれだけユーザーの行動を変えているか、すごく賢い人でもふつうは気づきもしません。

 SNSも動画アプリも、ユーザーを1秒でも長く引き止めるほど収益が上がる仕組みになっています。世界中の優秀な人たちが「どうすれば、人々を画面に釘付けにできるか」を競い合ってデザインした巧妙なしかけの中に、私たちはいるわけです。その結果、スマホ依存率は97%にものぼっていて、「ついつい見てしまう」のは当然とも言えます。

 だからこそ、人をスマホに釘付けにしてしまうデフォルト設定を見直し、知らず知らずに動かされない、ポジティブな環境を整えること。それが、実際に500万人の行動にもとづいた、「スマホを見すぎて後悔していた時間」を「自分が誇らしくなるような前向きな時間」に変える方法です。

(この記事は、『脱スマホ術 ──「何もせず1日が終わった」がなくなる』の著者戸田大介氏へのインタビューです)