そこへお茶出しに入った新人は、迷わず上座の社長からお茶を出し始めました。「上座から出す」というルールを忠実に守った結果です。

 しかし、本来であれば外部のお客様を社内の人間より先にお迎えするというのが接遇の大前提。上座・下座はあくまでも目安であり、「誰がお客様か」を見極めた上で応用しなくてはなりません。

 ルールを覚えることは大切です。でも、ルールの意味を理解せず表面だけをなぞると、かえって失礼になってしまう。

 これはお茶出しに限った話ではなく、ビジネスのあらゆる場面に通じる落とし穴だと感じた出来事でした。

「役員の連絡は秘書経由で」ルールを知っていたのに
新入社員が社長に直接内線をかけた「驚きの理由」

 もう一つ、こんなエピソードもあります。

 私が勤めていた受付では、お客様が到着された呼び出しなどを内線で行う際、「役員への取り次ぎは、必ず秘書の方に連絡すること」、もし秘書の方に繋がらない場合は、「別の秘書の方や近くの席にいる社員にかける」という、役員本人の内線を直接かけてはいけない決まりがありました。

 役員は多忙であり、直接連絡を取ることで業務を妨げないための配慮です。このルールも新人時代に徹底的に叩き込まれます。

 社長への来客があった日、事件は起こりました。お客様の到着を知らせる内線は、複数出席社員がいる場合は役割分担します。

「私は先に、社員のBさんにかけるから、あなたは役員に連絡して」と、私はある新人スタッフにお願いしました。無事、お客様と対応社員が応接室に入り、お茶出しも終えて一息ついたときのこと。

 新人は「社長って内線出るんですね!」と言ったのです。

 私は、「え、もしかしてさっきの来客の内線、社長に直接かけたの?」と恐る恐る確認しました。

 すると、「はい、そうです!内線番号書いてありましたし」とのこと。来客の取次時、直接内線をかけてしまったというのです。

「なぜ秘書を通さなかったの?」と聞くと、返ってきた答えは「社長が役員に含まれると思っていませんでした」――。

「なんと!!!」と思わず言ってしまいそうでしたが、ルールが当たり前になっている自分は新人も同様に考えるだろうと思ってしまっており、自分が甘かったと反省しました。