本当に意味がある面接を
実現するための神質問4選
では、対話の土台が整った場でこそ輝く神質問とは何か。私のこれまでの採用コンサルタント経験のなかで実際に使われるのを見た4つを紹介します。
1.「あなたにとって、働くとはどういうことだと思いますか」(仕事観を問う)
2.「あなたにとって、キャリアとは何だと思いますか」(キャリア観を問う)
3.「あなたが人生で一番大切にしていることは何ですか」(生観を問う)
4.「あなたは自分をどんな人間だと思っていますか」(自己理解を問う)
仕事選びや能力開発のフレームワークとして「WILL(何がしたいか)・CAN(何ができるか)・MUST(何をすべきか)」がよく使われます。上の4つは共通して、WILLの根底にある「BEING(自分の存在のあり方そのもの)」を問う質問です。
候補者は初対面の相手に自分の核の部分を語ることになります。友人や家族とであっても、こうした内容を真剣に語り合う機会はそう多くはないでしょう。面接という非日常の場だからこそ、また心理的安全性が担保されているからこそ、候補者は自分自身と真剣に向き合い、自分が本当に大切にしているものは何かを深く振り返り、この問いを考えることができるのです。
当然のことながら、これらの問いにすらすらと答えられるようなら、逆にその深さが損なわれます。真剣に答えようとすれば、候補者は「少し考えさせて下さい」と言わざるを得ないでしょう。そしてそれを許容できる面接の空気があることに意味があります。
優れた面接官に不可欠な
「中核3条件」
ただし、「神質問」をその場で機能させるには、面接官側にも高い素養が求められます。
心理学者カール・ロジャーズが提唱した「中核3条件」(※)は、本来はカウンセラーのための概念ですが、面接官や保育士・教師など対人援助職全般に当てはまるものであり、採用に関わる人すべてに必要なスキルだと私は考えています。
1つ目は「自己一致(自己理解)」。これは自分の価値観や反応パターンをきちんと把握している(メタ認知がある)ことを指します。自分自身が確立されており、候補者の言葉を聞いて湧き起こる感情を無理に消そうとせず、一定の距離を保って受け止められること。「深い自己理解がなければ、相手の世界に入っていくことができない」とロジャースは言っています。
2つ目は「無条件の積極的関心」。私たちは日常生活で自分と似た考えの人に自然と引き寄せられますが、面接官は目の前の候補者が自分の理解を超えていても、その唯一無二の人生を知ろうとする態度でいなければなりません。「あなたと私は考えが違うかもしれませんが、それでも私はあなたのことが知りたいのです」という態度です。これがなければ候補者は「ここでは何を話しても大丈夫」と感じられません。
3つ目は「共感的理解」。相手が見ている風景を、相手の目線で見ようとする姿勢です。相手が「なぜそう考えたのか」「そのときどんな気持ちだったか」を理解しようとすること。相手と完全に同化することではなく、完全にはわからなくても、わかろうとしているという真摯な態度が相手に伝わることが重要です。面接官はついわかったふりをしてしまいがちですが、分からないことは素直に分からないと認め、どんな感じなのかを確かめようとする努力をおろそかにしてはならないのです。
一般的にこの中核3条件を使いこなすためには、およそ100〜150時間のトレーニングが必要です。人事の役職者や採用専門職が長年の経験を経てたどり着く境地とも言えます。今日急に「面接官をやってください」と言われた現場の社員にできる芸当ではありません。だからこそ、そういう面接官と出会えた候補者は、たとえ不合格でも「この時間に価値があった」と感じることができます。
対話の土台があり、面接官自身が中核3条件を体現しているという2条件が揃ったうえで、4つの神質問が発せられたとき、「不採用になっても悔いなし」と候補者が感じるような、本物の面接、究極の面接が生まれるのです。
※Rogers, C. R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21(2), 95–103.








