養老 関わり合わないほうが面倒くさい。多くは頼まれ仕事で、それを断るのが面倒なんです。

和田 引き受けるのも面倒だし、断るのも面倒(笑)。

養老 だから長く続きそうな仕事は最初に考えます。途中で嫌にならないかな、とかね。負担にならないようにするんです。

和田 年をとってからですか?

養老 いや、昔からです。僕は小学校2年で終戦を迎えたから。戦中、大人は頑張ったでしょ。若者も子供も渦に飲みこまれた。国民全員が一億玉砕の雰囲気だったのに終戦でコロッと変わった。ああいうのはやめたほうがいいと、肌でわかったんです。

和田 臨床ではなく、解剖に行かれたのも、人に合わせるのが嫌だったからですか?

養老 患者さんを診るのが嫌なんだよ。人間ですからね。痛いの痒いのってうるさいでしょ。で、時には死なれちゃう。死なれるのが嫌なんです、僕は。患者さんに一所懸命になればなるほど、死なれるとこたえますから。

和田 人に縛られないということは、自分を縛らないことなんですね。

日本の過疎地の人口密度も
ヨーロッパでは平均!値?

和田 養老先生はお母様もお医者さんでしたよね?

養老 そうです。父が戦争中の昭和17(1942)年に亡くなり、母が開業しました。

和田 当時としては珍しいというか先進的で自立されてます。

養老 誰もが生きるのに必死でしたから。先ほど日本の同調圧力の話が出ましたが、僕は無理もないんじゃないかと思うんです。つまり物理的な問題だと。人が住める「可住地面積」で人口密度を測ると、青森や福島がヨーロッパの平均なんです。

和田 いわゆる過疎地ですね。

養老 はい。日本では過疎と言われる土地が、ヨーロッパなら普通なんです。それだけ人が寄り集まっているってことです。こうなると、お互いの顔を見ながら調整しなきゃならないでしょ。誰かひとりが違うことしてると迷惑になるからね。そうやって長い間に同調圧力みたいなものになっていったのだと思うんです。