和田 僕はアメリカのカンザスに留学していましたが、隣の家まで5キロくらい離れていたりする。アメリカはクルマ社会だからなんとかなるけど、日本では過疎の地域でも集落を作りたがります。民族性なんでしょうね。

養老 みんなで協力したほうが都合はいいですから。とくに水田耕作を2000年以上も続けてきているので。忖度とかも、仕方ない面があるのかもしれません。ただ、時代は変わったのだから、いつまでもそれにこだわってるのはおかしいと思うんですよ。

和田 仲間外れの恐怖感がすごく強いのだと思います。僕は子供の頃から人と馴染めなくて、仲間外れにされても気にしなかった。だから好きに生きてこられたような気がするのですが。でも東大医学部でも村意識みたいなものを感じたんですよね。小中高とものすごく勉強できて周囲から浮いてただろう人なのに、東大医学部村に入ったら、そこにしがみつく。落ちこぼれたくないって雰囲気がありましたね。養老先生の時代は?

養老 同じですよ。僕が基礎医学を専攻したのも、それが理由のひとつです。学生の頃、東大病院で若い医師とすれ違うと、全員機嫌が悪いんだよね。ちょっと上の先輩たちですよ。だからもうこんな機嫌の悪いところは嫌だと思って(笑)。

和田 序列というか。教授の機嫌を損ねたら飛ばされる、ということに神経を尖らせている。

養老 みんな辛抱して働いていたんだと思う。僕が「辞める」と言ったらうらやましがられましたよ。「お前は辞められるからいいよな」ってね。いいなと思うなら辞めればいいじゃないか、と思うんだけど、それができないんですよ(笑)。

東大出身の医師に
開業医が少ない理由

和田 東大病院の7不思議みたいなものですね。辞めて開業すれば、一国一城の主として上に気を遣わず医療ができるのに。だけど私立と比べて東大は開業医が少ない。開業する人は落ちこぼれとか負け犬っていう雰囲気がある。

養老 というより向いてない。母がよく言ってましたね。母は女子医大(当時は女子医学専門学校)でしたけど「医師会にも東大出身の開業医が何人かいるけど、だいたい流行らないのよね」と(笑)。

和田 営業力とかコミュニケーション能力が低いんですよね。流行っている病院の先生って、めちゃくちゃ愛想のいい人が多いですから。