ちば ありがとうございます。私の性癖なんでしょうけどね。主人公はもちろんだけど、脇役や悪役にしてもキャラクターを決める時に「こいつはどういう親がいて、どういう育ち方をしたのかな」とかね。実際には描かないんだけど、家庭環境とか、どんな友達がいるとか、そういうことまで考えちゃう。

和田 なるほど。

ちば するとね、なんか本当の悪人が描けなくなっちゃうんですよ。悪い奴を描きたいけど、どっか救いを持たせちゃう。「こいつはね、小さい時にひどい親にいじめられて育ったりした。だからこんなにグレて悪い人間になっちゃった。かわいそうな奴なんだよ」って。そんなふうに思ってしまうんです。

和田 そこがいいんですよ。ちば先生の漫画に深い人間愛を感じるゆえんです。

ちば なんかね、1人1人に思い入れが強くなっちゃってね(笑)。

かつて悪書だった漫画は
日本の文化へと変化した

和田 ちば先生は2024年に文化勲章を受章されました。

ちば ちょっとびっくりしましたね。もっとふさわしい人がたくさんいますから。

和田 漫画家では初めてです。

ちば みんなね、亡くなっちゃったから。漫画家は締め切りに追われて無理をするんでね。体力的にね、みんなまいっちゃうんですよ。

和田 ちば先生が受章されたことは、やはり意味のあることだと思います。

ちば 漫画っていうのはね、やっぱり素晴らしい文化だと思います。私じゃなくて先輩たちに素晴らしい漫画家たちがいたんです。たくさん。後輩たちも『キングダム』『進撃の巨人』『ドラゴンボール』『ワンピース』、最近では『鬼滅の刃』など世界中で日本の漫画が面白いと評価された。漫画だけじゃなくアニメーションとかゲームとか、いろんなものがね。

和田 どれも漫画から発生したものと言えます。

ちば 日本では漫画は日常の中に当たり前のようにあるけど、海外では日本の漫画は本当に芸術だって言ってくれる人もいましてね。それは葛飾北斎とか、あの時代からずっと素晴らしい先輩がいて、素晴らしい仲間がいて、素晴らしい後輩がいたからですよ。