一方、あるメーカーの入浴剤は、配信店舗で売り上げが6倍以上に跳ね上がった。冬の訪れで入浴剤の需要が自然に高まる時期だったため、非配信店でも売り上げは4倍以上。それでも、配信店は1.5倍の差をつけたことになる。「今夜は入浴剤を入れてみようかな」という気持ちになっているところへ、購買をそっと後押しする、行動経済学でいう「ナッジ」だ。
トライアルHD執行役員の野田大輔さんは、その応用として、花粉症警報との連動を考えているという。
「朝のニュースで花粉症警報が出ると、その日はマスクの需要が伸びます。これに合わせてインストアサイネージで『マスクをお忘れなく』と呼びかけると、『そうだ、買っていこう』となるはずです。こうした日々の需要に連動したナッジを、もっと増やしていきたいです」
店内サイネージがテレビCMと肩を並べるメディアに
こうした仕掛けを一歩引いて眺めると、一つの戦略が見えてくる。トライアルは、店全体を広告メディアと捉えているのだ。
首都圏の西友の入口では今、トライアルのアンバサダーに就任したロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手の全身パネルが迎えてくれる。店の顔ともいえるこの場所は、テレビCMでいえば企業ブランディングの役割を担う。
そこから売り場に向かうと、棚前のインストアサイネージが目の前に陳列された商品の動画を流し、興味をかきたてる。さらに、アプリやタブレット端末付きのショッピングカートでひとりひとりの購買履歴に合わせたクーポンを表示し、お得なチャンスを逃したくない心理を刺激する。
この一連の仕掛けの中でも、インストアサイネージが重要な意味を持つ。実は、東京都民の約2割が週に1度は西友に足を運んでいる。この規模の集客力を持つ首都圏の西友74店舗に設置したインストアサイネージは、視聴率5%のテレビ番組に匹敵する世帯リーチを持つという。視聴率5%といえば、夕方のニュース番組に相当する。つまり、スーパーの売り場が、夕方のニュース番組と肩を並べるメディアへと変貌していたのだ。
なお、インストアサイネージを先行導入していた福岡県内では、1日あたり19万世帯の来店があり、世帯視聴率換算で8%と、ゴールデンタイムに並ぶ影響力を示した。







