軍事行動とらなくてもそれを上回る効果
防衛白書も脅威への対応強調
サイバー攻撃の特徴は、宣戦布告をして明確な軍事行動を取らなくても、それと同様の、場合によっては、それを上回る効果が実現できてしまうかもしれないことだ。
しかも、攻撃主体を特定したり、被害を把握したりすることも容易でない。このため、敵の軍事活動を低コストで妨害できる。
その意味で「非対称な攻撃手段」であると言われる。多くの国がサイバー攻撃能力を構築・強化しているのは、そのためだ。
これまで日本で防衛問題が議論される場合、主要な論点は防衛費の総額や、あるいは、憲法第9条との関係での専守防衛や武器輸出の問題だった。
その一方でサイバー戦の重要さについては、十分な議論がされてこなかったように思う。
ところが最近では、サイバー戦についての関心が高まっている。令和7年版防衛白書はサイバー戦を、陸、海、空、宇宙に次ぐ「第5の戦場」と呼んで、その重要性を強調している(注2)。
強まる中国AIの潜在的脅威
北朝鮮は外貨収入の5割をサイバー攻撃で
アメリカのAI企業、アンソロピックによって開発された生成AIクロード・ミトスは能力が高すぎて、悪用されれば、サイバー攻撃が現在とは比較にならないほど容易になると言われる。
だが、スタンフォード大学が最近、発表した報告書では、AIの回答を人間が評価するテスト結果で、中国のトップAIがアメリカ製に僅差で迫り「米中の性能差はほぼ解消した」とされている(注3)。
そうだとすれば、中国がミトス級のAIを開発できるまでに、それほど時間はかからないだろう。敵の軍事システムの中に入り込み、それらを破壊した後で、痕跡を残さずに退却するといったことができるかもしれない。
そうなれば、知らない間に国の防衛力が無力化されてしまうという事態が、現実に起こりうることになるわけだ。







