過去最高の売り上げから急降下
EVMJの2025年12月期の業績は、売上高が27億1448万円、最終損益は減損による特別損失がかさみ、49億800万円の赤字を計上した。万博向け納車が寄与したことで最高の業績を挙げた2024年12月期の売上高80億927万円から、わずか1年で売り上げは半分以下に落ち込んだ。安全性の問題が表面化し、営業活動どころではなかったことがわかる。2022年3月期(決算期変更)は1億6200万円に過ぎなかった売上高は、2年後に約50倍に急伸し、そして、ジェットコースターのように急降下した。
こうした事態を受け、2025年末から資金繰りはひっ迫の度合いを増していた。EVMJは取材にノーコメントを通しているが、地元の関係者は「2025年末に金融機関にリスケ(返済猶予)を要請したが、現預金は約10億円まで減少していた。工場の建設代金は補助金で充てる予定だったが、不祥事の発覚で補助金を止められたようだ」と推し量る。
EVMJが裁判所に提出した民事再生申立書によると「2025年12月末の金融機関に対する約定返済が困難となったため、同月下旬に返済猶予を要請し、その後もバンクミーティングを重ねた」という。
26年3月中旬からスポンサーを探したが事態は好転せず、工場などの建設代金の支払いにも事欠く窮状が明らかになった。ファブレスメーカーの宿命だが、売上高が伸びるほど生産委託先への支払いなどの資金需要が活発になる。また、安全性の問題が発覚するまで業績が急拡大していたため、負債も膨らんでいた。そこに急激な業績不振に陥り、収入が途切れたのだから、加速度的に資金繰りが悪化した。
“たら・れば”は無意味だが、万博で採用されなければ、安全性へのチェックに時間を割けたのか。納車されたEVバスの約3割で不具合がみつかったが、輸入から納車までの検査体制はどうだったのか。周囲の期待が納車優先に走らせたとの見方もあるが、安全性をないがしろにしたツケは大きかった。
地元の北九州市は、安全を最優先にメンテナンス体制が正式に決まるまでEVMJから導入した3台のバスの使用を見合わせている。
スポンサー支援での再建目指す
民事再生法の申請から6日後の4月20日、EVMJは北九州市内で債権者向け説明会を開催した。説明会には債権者約100人が出席し、EVMJは国内外でスポンサー探索を進め、支援を得て再建したいと意欲をみせた。スポンサー候補は国内外で10~20社をリストアップし、民事再生法の適用申請後も問い合わせがあると語った。
EVMJの大口債権者は金融機関が占めていたこともあり、通常は紛糾することが多い説明会が、一般債権者からの厳しい追及もなく40分余りで閉会した。
ただ、この会場に第三者割当増資に応じた関係者の姿はなかった。将来性を期待され、40社あまりから調達した総額82億円の資金はどうなったのか。
スポンサー候補の話が事実であれば、これまで数々のコンテストでの華やかな受賞歴と同様に、EVMJの持つ技術や企業価値、可能性への評価の表れかもしれない。
だが、受賞時の経営陣は、華やかさの陰で安全性への視点をどうとらえていたのか。新たなスポンサーや新経営陣のもとで原点に立ち返り、信用回復と高い技術開発に取り組めるのか。ものづくりの街で誕生した次世代ベンチャーは、真価を問われている。







