「A君はできているのに」「俺の若い頃は」――その比較が、部下を奮起させるどころか傷つけていませんか。成長を促すのに必要なのは、誰かとの優劣ではなく、目標と現状の差を示すことです。
SNSでビジネススキルについて情報発信を行い、総フォロワー数が37万人を超え、『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』の著者である「にっしー社長」こと西原亮氏に教えてもらった、誰でも「しごでき」になれる令和リーダーの基本を本記事で紹介します。

部下を比較しない
「俺が新卒のときは、結果が出るまでお客様先に通い続けたぞ」
「新卒のA君は、たった3ヶ月でここまでできるようになっているぞ」
部下を指導する際、ついこのような「比較表現」を使ってしまったことはないでしょうか?
誰かと比較することで、部下の現状がいかに足りていないかを認識させ、奮起させたい。そんな親心で言っているのかもしれません。
しかし、比較された部下は、「自分はダメな人間だ」と叩きのめされるだけで、具体的に何をどう改善すればいいのかがまったくわかりません。結果、モチベーションは地に落ち、上司への不信感だけが募ります。
なぜ、上司は「比較」したがるのでしょうか?
そこには、上司も気づいていない2つの心理的背景があります。
①上司自身の「保身」
自分自身の言葉で厳しく指摘する勇気がないため、「A君はできているのに」と他者を主語にすることで、責任を分散させようとしています。
②言語化からの「逃避」
本来は「君のこの行動のここが、この基準に達していない」と言語化して伝えるべきです。しかし、「A君を見習え」と安易に比較することで、部下に「察すること」を強要しているのです。
絶対にやってはいけない「過去の自分」との比較
比較には大きく分けて3つのパターンがあります。
・部下の同僚との比較
・部下の後輩との比較
・上司自身の過去との比較
この中で、最も罪深く、絶対にやってはいけないのが「上司自身の過去との比較」です。
同僚や後輩との比較であれば、まだ「同じ環境、同じツール」を使っているため、「彼らのやり方を真似してみよう」という解決策が見出せるかもしれません(それでも推奨はしませんが)。
しかし、「私の若い頃はこうだった」という比較は、何の意味もありません。
過去と現在とでは、市場環境も、使えるツールも、労働法制も、顧客の価値観もすべてが違います。
前提条件が違う比較を持ち出されても、部下の心に浮かぶ言葉はたった一つ「で?(だから何ですか?)」だけです。
今の部下にとって、上司の過去の苦労話は「再現性のない昔話」に過ぎません。「俺は寝ずに働いた」と言われても、「今はコンプラ違反ですね」で終わりです。
解決策もネクストアクションも提示せず、ただ「私はすごかった」というマウントを取られて時間を浪費したように思われてしまいます。
「誰か」と比べるのではなく「基準」と比べる
今日から、指導の際に「誰か」の名前を出すのをやめてください。比較対象は、「過去の自分」でも「優秀なA君」でもありません。「あるべき姿(ゴール・基準)」です。
×「A君はできているのに、なぜ君はできないんだ」
○「今回の目標は契約5件だ。君の実績は3件だ。この2件の差を埋めるために何をしようか?」
人と比べるのではなく、基準(ゴール)と現状のギャップだけを事実として突きつける。そこに他人の影はいりません。
「比較」を捨て、「事実」に向き合う。それが、部下のモチベーションを下げずに成長を促す、唯一の方法なのです。
(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』から一部を抜粋・編集し作成しました)














