たとえば、中卒で解体や土工のテゴ(見習い)をしても大手企業の年収はとても得ることができませんが、裏社会で薬物を売買するネットワークや風俗に女性を紹介する組織体制を構築すれば、若くして大手企業の給与以上の稼ぎが可能となるのです。

学校から落ちぶれた不良少年が
ヤクザに流れ着くまで

 筆者が、数多くの暴力団離脱者から得たデータをまとめると、暴力団加入に至る諸要因は、個人の発達にともない、以下のように示されると考えます。

 もっとも、以下の要因分析は、昭和から平成当時のヤクザ(あるいは暴力団)の事情であり、トクリュウや半グレ、準暴力団などといった昨今の非行・犯罪グループには該当しないと思います。

 生育家庭の機能不全による不完全な社会化は、近隣における同輩集団形成を促し、持続的な非行集団を形作る原因となります。この非行集団の加入者は、学校の権威者たる教師から否定的に評価された結果、彼等に対する不信や反抗により結束します。そして、そのような同輩集団は、近隣社会に共生する非行集団や暴力団と接触する機会が顕著であり、そこに成員を供給する装置となっているのです。

 また、成績不良者であることは、学校内に存在する2つの文化、すなわち、教師を評価者とする「学校文化」と、生徒を評価者とする「生徒文化」(向学校的なものではなく、非行性を内包する反学校・非学校文化に代表される)のうち、後者に馴染む傾向がありました。

『ヤクザが消えた裏社会』書影ヤクザが消えた裏社会』(廣末 登、筑摩書房)

 この「生徒文化」は、先輩と後輩とのつながりを通して非行集団予備軍を育む場となり、先輩から非行副次文化(非行サブカルチャー)の投影を受けることで非行を深化させます。

 加えて、彼らは、慣習的な職業社会における文化的成功目標達成を阻まれ、将来への不安を抱いています。ゆえに、彼らは、暴走族や愚連隊などの非行集団内に居場所を見出し、より報いの大きい役柄を見つけようとするのです。

 しかし、非行集団に加入することは、近隣社会に共生する暴力団と接触する機会を高めることとなります。さらに、こうした個々の要因の連鎖に、主体的要因である地位的欲求、すなわち、少年が非行副次文化内で仲間の賞賛や評価を求めるという個人的要因が加わったとき、ヤクザ(あるいは暴力団)に加入する傾向が高くなると見出せました。