1年生の楽しい飛び込み授業が終わり、私は誘ってくれた先生方と一緒に学校内の様子を見に行きました。すると2年生の教室でこんなものが目に飛び込んできました。

“子どもの机の下の足型”

 教室の子どもたちの机の下に、グレーの足型が置かれていたのです(図1)。

図1・小学校2年生が使っていた机と椅子。机の下にあるのは足型。椅子の座面には滑り止めのマットが敷かれています。同書より転載 拡大画像表示

 心がざわついたのをよく覚えています。すぐに一緒にいた先生に「何ですかこれ?」と尋ねました。

「授業中、この位置に足をちゃんと置いて座れ、という指示なんです」

 そこでじっとしていなさい、という意味でした。

教師の都合で引き起こされる
学校での教育虐待

 教育虐待、という言葉が頭をよぎりました。「まっすぐ座れ」という学校側からの極端な強制です。

 教育虐待とは、「親が子どもの心身が耐えられる限界を超えて教育を強制すること」と定義されています。臨床心理士の武田信子さんが日本で初めて学会で提唱した概念です。

 父親の教育虐待による事件も起こり注目されました。以前は「教育ママ」という言葉も多く使われ、従来「家庭でのこと」というイメージもあるのではないでしょうか。親による体罰やネグレクト、夫婦喧嘩も含め不適切な育児はマルトリートメント(避けるべき子育て)と呼ばれています。

 一方、学校でもこれに近いことが起きています。学校で起きる教育虐待は「教室マルトリートメント」とも呼ばれています。

 最たる例は部活動での厳しい練習中の死亡例です。また顧問や先輩による強い叱責の結果、その後命を絶つというような「指導死」もこれまで起きてきました。

 あるいは、死にはいたらない、家庭での教育虐待のように過度な学習を強要しているわけではないが、「子どもたちが健やかな生き方をなくしている状態」もまた「学校での教育虐待」だと言えます。私はそう定義したいです。

 四国の教室で、その「足型」の写真を撮らせてもらいました。撮影時によく見ると椅子のおしりが接する部分にはグレーのマットのようなものが置かれていました。滑り止めです。