図工の時間に使うカッターマットのような素材感でした。座りやすさを考えたものではありません。聞くと「おしりをその位置に置き動かさない」ということだったのです。
足型の設置は全国学力テストの
点数を上げるためだった
私は、このクラスの若い男性の先生に聞きました。
「先生に子どもがいたとして……授業参観に行って、足型と滑り止めのあるところにわが子が座っていたとしたら、保護者として嬉しいですか?」
後日、この先生はご自身の判断により、教室で足型そのものを見えないところに置いたそうです。
私を学校に呼んでくれた先生が、教室でこれが実施されている理由を教えてくれました。
そこには「全国学力・学習状況調査(以下、全国学力テスト)の点数」がありました。テストを受けるのは6年生ですが、2年生にも対策がとられていたのです。
その県は、全国ランキングでも下から数えて何番目、という結果が出てしまったことを地元マスコミが騒ぎ立てるようになったのです。これに対して、県教育委員会はある教育アドバイザーの方に依頼をしたというのです。
「点数アップをお願いしたい」と。
『足型をはめられた子どもたち』(菊池省三、講談社)
その県の教育風土は「自由奔放」というようなおおらかなものでした。だから、改善策としてちゃんと座らせて、ちゃんと教えて、スタンダードに科目を教えていけば点数が上がる、という考えの教育アドバイザーの指導を県の教育委員会が採用したのです。教師が子どもたちに対して、厳しく「ちゃんと座れ」などと叱責しにくくなっている時代ですので、すべてが間違いではないとも思います。
しかしです。考えてもみてください。大人だって相手の話を聞くとき「ああなるほど、そうなんですか」と身を乗り出したりします。子どもたちならなおさら自然にジェスチャーもついてくるのではないでしょうか?足は動かせず座る位置まで指定することで、話も弾まず、考えるのが面倒になったりすることは非常にもったいないことだと思うのです。
根底には大人から見て「子どもがダメだ」「ちゃんとさせなきゃいけない」という意識が感じられる、そんな風景でした。「型にあてはめる教育」が比喩ではなく、実際の形式として行われているのです。
それは、私が10年間日本中で飛び込み授業を行うなかで、たびたび見聞きする状況の象徴的なものでした。







