「犯人じゃないということは
はっきり申し上げたいです!」

 私と篠田はそれ以前から眞須美とは面会や手紙のやりとりを重ねており、今さら話すこともあまり無いため三澤に質問の機会を与え、私と篠田は横で聞いていた。眞須美がこの時、三澤に無実を主張する必死な姿は強烈な記憶として残っている。

『実録 死刑囚26人の素顔』書影実録 死刑囚26人の素顔』(片岡 健、宝島社)

「私は、カレー事件で亡くなった4人の方は全員、よく知っています。遺族の方に『眞須美の死刑を早くしろ』なんてコメントされたら、やり切れないです。私が犯人だと墓前に報告されたくないですし、犯人じゃないということははっきり申し上げたいです!」

「私の死刑が当たり前だと言うてる人は、マスコミの報道でホースで水をまいてるのを見て、『眞須美が犯人や』と思っているだけです。裁判員になって、裁判の中身を1つ1つ見たら、私を絶対に死刑にできないはずです!」

 眞須美はそのように主張しながら感情が高ぶったのか、目尻から涙があふれ、頬を伝い落ちていた。私はこれほど極限状態の人間を見たのは、後にも先にも他にない。

 それでも、眞須美は面会室を出て行く際は笑顔だった。振り返ると、面会終了時、眞須美は常にそうだった。それが、現時点で私が見た林眞須美の最後の姿となった。

一貫して冤罪を訴えている林眞須美。最高裁に上告中だった頃に届いた手紙はいつも蛍光ペンで「Help Me」「HOPE」「SMILE!!」などの文字が表書きされており、必死な思いが伝わってきた。一貫して冤罪を訴えている林眞須美。最高裁に上告中だった頃に届いた手紙はいつも蛍光ペンで「Help Me」「HOPE」「SMILE!!」などの文字が表書きされており、必死な思いが伝わってきた。同書より転載