「新しいやり方でやってくれ」と言っても現場が変わらない――その原因は、部下の意欲でも能力でもない。できる上司は「ある一言」を加えるだけで、長年の習慣をスムーズに塗り替えている。
SNSでビジネススキルについて情報発信を行い、総フォロワー数が37万人を超える「にっしー社長」こと西原亮氏の著書、『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに、誰でも「しごでき」になれる令和の仕事の基本を解説する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

仕事ができる人は「古いやり方はやめて」と言わない。ではどう言う?

なぜ「正しい指示」でも現場は動かないのか

マネジャーの多くは、一度は経験したことがあるはずだ。

古いやり方はやめて、明日からこのやり方に切り替えてほしいと明確に伝えたにもかかわらず、翌日も翌々日も、現場は従来のやり方を続けている。

これは、部下が指示を無視しているわけでも、能力が足りないわけでもない。

人間の脳は本能的に「変化」を脅威と感じるようにできている。

長年積み上げてきた習慣は、無意識のうちに「正しいやり方」として定着しており、新しい指示が来ても、身体が古い動きを選んでしまう。

つまり、問題は「指示の正しさ」ではなく、「指示の伝え方」にある。

「~だけ」が現場の抵抗を消す理由

部下の行動を変えること。あるいは、組織の文化を変えること。

これらはビジネスにおいて最も難易度の高いミッションの一つです。

明日からこの新しいやり方でやってくれと言っても、長年の習慣はそう簡単には抜けず、現場は抵抗します。

そんなとき、人の行動を劇的に変える「魔法の言葉」があります。

それは、「~だけ」という言葉です。

 

「~だけ」という言葉には、心理的な負荷を大幅に下げる効果がある。

全部変えろではなくこれだけやってみてと言われると、人はそれくらいなら試せると感じる。

変化の全体像を見せずに、最初の一歩だけを示すことで、抵抗感が生まれる前に行動を引き出せるのだ。

たとえば報告書のフォーマットを全面刷新してほしいではなく、まず冒頭の結論欄だけ先に書くようにしてみてと伝える。

会議の進め方を変えようではなく、今日の会議だけ、最初の5分でゴールを確認するだけでいいと言う。

このように指示を小さく絞り込むことで、部下は「できそう」と感じ、自然と行動に移る。

できる上司は「変化の入口」を小さくする

できる上司とそうでない上司の差は、指示の「量」や「正確さ」ではなく、相手が動き出せる「入口の小ささ」にある。

変化の全容を一度に伝えることは、管理職の側からすれば誠実に見えるが、受け取る側には「やるべきことの山」として映る。

「~だけ」という言葉は、その山を見えなくする技術だ。部下が最初の一歩を踏み出せば、次の変化は自然に続く。

行動が習慣を変え、習慣が文化を変える。

リーダーに求められるのは、大きなビジョンを語ることだけでなく、部下が「今すぐ動ける」状態をつくることでもある。

明日から試すなら、まず「~だけ」という一言を、自分の指示の冒頭に加えてみることだけでいい。

(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに作成しました)