「体にいいものを選んでいるつもりなのに、なぜか不安が消えない」
そんな感覚を抱いたことはないだろうか。とくに認知症の予防というと、特別な食材や健康法を取り入れることに意識が向きがちだ。しかし、その“良かれと思っている習慣”の中にこそ、見落とされているリスクが潜んでいる可能性がある。元オックスフォード大の医学研究者であり、医学博士として脳と糖の関係を研究してきた下村健寿氏は、認知症リスクを高める意外な要因として、日常的に摂取している「糖」に注目する。下村氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』から、知らず知らずのうちに脳に負担をかけている食習慣の実態をひもといていく。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

【医師が警鐘を鳴らす】認知症にならないために気をつけたい「意外な食べ物」・ベスト1Photo: Adobe Stock

「認知症のリスク」を高める意外な原因

 認知症というと「家系の問題」「遺伝だから防げない」と考える人は少なくないが、じつは意外な原因がある。

 元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は著書『糖毒脳』で、こう指摘している。

 じつは私たちの身近なところに、脳を蝕む「魔の手」が潜んでいます。
 それは、日々の食生活に潜む「糖」です。

――『糖毒脳』より引用

 糖を摂ると血糖値を下げるためにインスリンが分泌される。

 しかし糖の過剰摂取が続くと、やがてインスリンが出づらくなったり、効き目が落ちたりしてしまう。

 インスリンは脳内で「学習」や「記憶」を司る脳神経細胞同士の情報伝達をスムーズにしたり、アルツハイマー病の原因となる「アミロイドβ」などによる攻撃から脳神経細胞を守る役割も果たしている。

 そのインスリン分泌に異常がおきるため、結果として糖の摂りすぎは認知症リスクを高めてしまうのだ。

「果物」の摂りすぎには要注意

 そこで気をつけたい意外な食べ物が、「果物」だ。

「果物の甘さは血糖に関係ない」「果物は糖尿病や高血圧を改善してくれる」という話を聞いたことがある人もいるだろう。

 しかし下村氏は「残念ながら、これは誤解だ」と言う。

 確かに、果物の甘さの素の一つである果糖は、そのままでは血糖にはなりません。ですが肝臓などで代謝されると、結局は糖になります。
 また、果物には果糖以外にも通常の糖(ブドウ糖)とショ糖(スクロース)が含まれています。ブドウ糖は食べればそのまま血糖になりますし、ショ糖も、果糖とブドウ糖が結合しただけの物質です。体の中に入れば速やかに果糖とブドウ糖に分解されます。
 つまり果物を食べた場合、果物にもともと含まれている糖と、ショ糖から分解された糖が速やかに血糖値を上昇させます。

――『糖毒脳』より引用

 果物にはミネラルやビタミンなどの重要な栄養素が含まれているが、それらは「普通に食事をとっていれば十分な量を摂取することができる」と、下村氏は言う。

 つまり果物は、健康のために積極的に摂取するほどの食材ではない。

 むしろ「おいしいから」という理由でこそ召し上がってください。週に1~2回ほど、楽しむために食べる「嗜好品」だと考えるとちょうどいいのではないでしょうか。
――『糖毒脳』より引用

 下村氏も、こう書いている。

 やはり重要なのは、何か1つの食材に頼らず、バランスの良い食事を心がけることなのだ。

(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。