企業に最も必要なのは、年齢の多様性
秋山 これほどまでにAIの進歩がめざましいと、企業の利益を上げるために本社の営業管理部門の従業員をすべてAIに置き換えれば短期的には人件費を削ることができ、利益が急増して株主にメリットを出せる。しかし、すべての企業が目先の利得だけで判断して同じように雇用を奪っていけば、中長期的には消費者の所得を奪い、顧客そのものを自ら消滅させることになり、10年後には企業が潰れてしまう。
そうした意味もあり、今回の改訂では、中長期で経営を考えようという指針がとてもよいと思うものの、地政学リスクの増大やAIなどの技術革新が急速に進むこれからの時代において、中長期を見通すこと自体が困難だとも思いました。
今の経営陣は30年間デフレの世界で、しかもグローバルビジネスが比較的安定していた時代を生き抜いてきた人たちです。その常識が今の急変する世界で通用するかというと、非常に怪しい。こうした点をどう考えていけばいいのでしょう。
円谷 私は今の時代、企業に最も必要なのは、エイジのダイバーシティ(年齢の多様性)だと考えています。というのも、毎日学生と接していると、生まれたときからスマートフォンがある彼らと、人生の途中からデジタルに触れた我々では、思考や行動の前提が違っており、まるで宇宙人を見ているようです。
たとえば、有料の新聞を購読している学生はほぼおらず、「先生、情報はただなんですよ」と言う。就職活動(就活)で企業を調べる場合でもそうなんです。「無料の情報は玉石混交。真偽はどう判断するの」と尋ねると、就活マッチングアプリやSNSで当該企業の社員に直接つながればいい。生の声を聞くから大丈夫だと。複数人から聞けば情報も立体的になるというのです。こうした感覚は彼らにとっては至極自然なものです。
秋山 そういう世代が顧客にもなり、社員にもなっていく。さらにもうすぐAIとともに生きてきた世代も社会に出てきますね。
円谷 そのときに、企業はどこでフィーを取るのかを考えなければなりません。これまでの成功体験だけをもとにしていては、消費者の感覚と乖離するばかりです。将来の競争力を見据えて不要な事業を思い切って転換するのが本来のポートフォリオ経営です。
しかし、企業の改革で、事業ポートフォリオを再編するにしても、取締役会に年齢の多様性がないと、今ある事業部の顔を立て、波乱なくやり過ごして10年後の衰退に甘んじるのか、今身を切って10年後の成長を取るのかという局面で、前者を選んでしまう。上の世代は10年後にはもう組織にはいないからです。社外取が適切に監督機能を発揮できるように、エイジのダイバーシティを含む多様な視点が意思決定の場に入ることは不可欠です。
もちろん、取締役全員を若くすればよいという話ではありません。経験は重要です。ただ、取締役会が特定の世代だけで構成されていると、判断の前提が大きくずれてしまうし、未来の危機を肌で感じ取ることができなくなります。
秋山 CGコードの遵守を「やらされ仕事」と思っている企業の方もいらっしゃるかもしれませんし、一般的にはあまり大きな関心事ではないかもしれませんが、今後の日本企業の存続がかかっているのはむろんのこと、国力の向上、ひいては私たち一人ひとりの生活にも直結する問題ですね。
株主からの健全なプレッシャーを経営者がうまく企業価値向上に転換できるようになれば、世界に冠たる日本企業がもっとたくさん出てくるかもしれません。そう考えると、コーポレートガバナンスも少し身近に感じられるのではないでしょうか。今日は貴重なお話をありがとうございました。








