左から円谷昭一教授、秋山進氏
3月決算の企業が多い日本では、これから株主総会ラッシュが始まる。折も折、2026年6月を目途に、約5年ぶりとなるコーポレートガバナンスコードの改訂が行われる。改訂有識者会議のメンバーでもある一橋大学の円谷昭一教授と、人気連載「組織の病気」の著者で、リスクマネジメントのエキスパートである秋山進氏が対談。日本企業が本当の意味を十分理解しているとは言い難いコーポレートガバナンスコードはなぜ存在するのかから説き起こし、日本企業が再び世界でプレゼンスを高めるための方策まで、白熱の議論が繰り広げられた。前編では、今回の改訂の意味や社外取の本当の役割などを取り上げる。(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役 秋山 進、一橋大学大学院経営管理研究科教授 円谷昭一、構成/ライター 奥田由意)
コーポレートガバナンス改革の根底に「日本の国力低下」
秋山進(以下、秋山) 日本では組織で何らかの不祥事が起きるたびに、ガバナンスの機能不全と言われ、その多くは、コンプライアンスの問題を指しているように見えます。企業の執行役員を対象に研修をすると、ガバナンスとは経営者が会社を統治することだと思い込んでいる人が圧倒的に多い。
円谷昭一(以下、円谷) コーポレートガバナンス(CG)は株主から委託を受けた取締役会が、経営を担う人間を監督し、必要であれば交代させるしくみです。CGコードはそのための原則(コード)を金融庁がまとめたもので、内部統制やコンプライアンスはあくまでそこから派生する具体的な手段です。
しかし、日本ではおっしゃるとおり、投資家側から企業をコントロールする側面はあまり認識されていません。なぜ今、国を挙げて企業にCGコードに沿うことを強く求めているかというと、資本効率の向上を図り、国力低下を防ぐという切実な理由があるからです。
上場企業の時価総額をアジア全体で100としたとき、1990年のバブル絶頂期には日本が約85パーセントを占めていました。アジア投資とはすなわち日本投資だった。それが今や中国企業の成長で、日本企業の割合は約17パーセントにまで落ち込み、アジアでの相対的地位は大きく下がりました。
国力の代理変数とも言える時価総額が相対的に低下すると、年金基金にも影響し、国民一人一人の生活水準にも直結します。この国力低下を何とかしなければという問題意識がガバナンス改革の根底にあると思います。
秋山 日本企業は長らく手元の現預金を厚く残して借入金を返済し、内部留保をひたすら積み上げて、投資はしてきませんでした。コロナ禍もありましたし、有事に頼れる現金を確保したい心理はわかります。
円谷 ええ。ただ、守勢一方ではアジアの中での地位はますます下がるばかりです。そこで、企業の自律に任せてきた経営に、株主や投資家という他律を効かせようというのが、CGコード導入の背景にある発想です。企業がリスクを取って成長分野に投資するときに、投資家が背中を押す存在として機能するよう、まずは、社外の人間を取締役会に入れ、資本効率意識を企業に求めることから始めていきました。
秋山 いきなり変革を迫るのは無理なので、株主視点の経営が身につくように社外取締役(以下、社外取)を増やすなど、段階的に導く形になっていたのですね。なかなか巧妙ですね(笑)。







