せっかく輸出で世界最強クラスの力を持ちながら「さらなる成長」ができないまま、いつまでも「薄利多売」を強いられるのである。人民元の管理体制は、体制維持には不可欠だが、「輸出大国なのに投資所得国家になれない」ことの原因の1つであり、経済の成熟化を阻む要因になっている。
中進国から先進国になることの困難さを指す「中進国の罠」という概念が経済学にはあるが、中国はいわば政府主導の「永遠の中進国の罠」に陥っていると言っていいだろう。
「日本型デフレ」より厄介な中国経済
資本規制と過剰な国家介入は、国内に別の歪みをもたらしている。それは国内で投資効率の低い産業への資金流入が続き、過剰生産に陥って、さらに利益率が下がるという現象だ。そして、その過剰生産された商品が外国で投げ売りされる実質的な「ダンピング輸出」が行われることである。
現在の中国の姿は、バブル崩壊後のデフレ期の日本に似た部分がある。不動産市場が傷み、家計は消費を控え、企業は価格競争に追い込まれ、物価と所得が伸びにくい構造が続いている。習近平政権は「共同富裕」を掲げたが、家計への所得分配は進んでいない。
だが、中国の病理は当時の日本よりさらに悪い。日本がデフレに陥ったとき、輸出で投げ売りしなければならないほどの過剰生産は起こらなかった。たしかに人件費をぎりぎりまで削減する深刻なデフレが長期間にわたり進んだが、今の中国はそれよりはるかに深刻なレベルにある。
中国の場合、巨大な生産能力を活かして世界中に安価な製品を輸出することで「日銭」は稼げているのだが、それでは問題を先送りしていることにしかならない。内需拡大、家計所得の向上、社会保障の充実、民間企業への資本移転などの構造改革は常に先送りされるのである。
つまり、輸出が構造改革を避けるための「逃げ道」にされているのである。







