輸出黒字が国家に吸収される
中国経済のさらに深い問題は、輸出で得た外貨が、民間企業の自由な資本として十分に機能しないことである。
中国では、資本移動が厳格に管理されている。中国企業は、海外証券や海外企業に投資したり、外貨建て資産へ自由に資金を移したりすることが厳しく制限されている。そのため、輸出で稼いだ外貨は、国家外貨管理局や人民銀行、国有銀行を通じて、国家管理の外貨としてプールされることが多い。これは中国政府が、常に大量の外貨を必要としているからである。
中国政府が中国企業の投資を制限して、外貨を吸収するのには、主に4つの理由がある。
1. 人民元相場を一定の範囲内に管理する(為替介入)
2. 資本の大量流出を防ぐ
3. 外貨準備を維持して金融危機に備える
4. 「一帯一路」など国家戦略に沿った海外投資に活用する
民間企業はせっかく外貨を稼いでも、それを自由に自社の成長に振り向けることができない。本来であれば貿易黒字は、民間企業の成長資本として自由に配分され、企業が成長し、結果的に国を成長させるべきだが、中国ではそれができない仕組みができあがっている。これが日本やドイツとの決定的な違いだ。
日本やドイツでは、企業が稼いだ利益を比較的自由に海外へ再投資し、それが対外資産として積み上がり、さらに投資収益として還流するという好循環が機能している。それに対して、中国では資本規制によって「収益→投資」のところが部分的に遮断されている。
企業の成長を歪める為替管理
人民元は、完全な市場通貨ではない。人民銀行が毎日の基準値(中間値)を設定し、変動幅を管理し、国有銀行が市場で外貨売買に介入する。この仕組みは短期的には中国経済を守っている面がある。急激な人民元安を防ぎ、輸出競争力を維持し、投機的な資本流出を抑制する。
だが、これが長期的には大きな副作用をもたらしている。企業は稼いだ外貨を自由に海外へ振り向けられず、国有企業や政策金融が市場原理よりも国家戦略を優先される。これは、民間企業が経営力の根幹である「資本配分」を自らの意思で行えないことを意味する。







