守られた水は腐る。そして、鮎は清流にしか棲まない――。外敵から守られ、波もない池は、一見安全に見えます。でも流れがなければ、いずれにごってしまいます。一方、川の清流は激しく流れ、ときに岩にぶつかる厳しさもある。だからこそ水は澄み、美しい鮎が棲むことができるのです。

 組織も同じです。「働きやすさ」という名の「停滞」は、プロの誇りを持つ優秀な人材にとって、物足りなさを感じる原因になります。「この環境では自分の成長が止まってしまうかもしれない」という不安を生むのです。

辞める原因は「ホワイト」じゃない
では、本当の問題は何か

「ホワイトすぎて辞める」とよく言われますが、私は必ずしもそうでないと思っています。辞める原因は、ホワイトさそのものではありません。組織のトップに問題があるのです。

 ここで言う「問題」とは何か。それは、仕事のやりがいを言語化できておらず、短い時間で高い成果を出すための「仕組み」を作れていないこと。ここに尽きると思います。

 長時間働いて人格を磨く、というのは昭和的な古い価値観です。今やAIが現場の標準インフラになり、若手の売り手市場で人材の流動化が一気に進んでいます。こうした時代の経営者に求められているのは、「どうすれば社員の無駄な負担を減らし、本質的な仕事に集中させてあげられるか」という戦略です。

 本当に優れた「ホワイト企業」とは、最短の時間で最大の成果を出し、その果実を社員の給料と心の安定(=メンパ)に再投資できる、知的で規律のある集団のことを指すでしょう。若手が逃げていくのは「ホワイトだから」ではなく、その会社に「高い基準」と「勝つためのロジック」がないからなのです。

若手が求める「成長」と
「メンパ」を両立させるには

 では、若手が求める「成長」と「メンパ」を両立させるには、どうすればいいのか。キーポイントは、上司が「自分の基準を下げない」ことです。

 プロの世界では、「けっこう頑張ったよね」という甘えは通用しません。私自身、経営者として社員を家族のように大切にしますが、納品のクオリティやお客様との約束については、いっさい妥協しません。

 お客様は何を求めているのか。その品質に対して、社内できちんと話し合う。仕事は厳格なほうがいいのです。