実現にこぎ着けた太陽光発電の案件は実はそんなに多くない

「数字だけは世界トップに躍り出ましたね」。ある業界関係者は、国内の太陽光発電の現状についてこう話す。

 2012年7月に導入された再生可能エネルギーの全量買い取り制度の追い風を受け、普及が進む太陽光発電。その中で、買い取り条件となる「設備認定」の量が、驚異的なペースで伸びていることが業界の関心の的となっている。複数の政府関係者によると、今年3月末までの総出力は累計で2000万キロワットに達するもようだ。

 この数字は、単純に出力だけで見ると、原子力発電所約20基に相当。また、再エネの先進国であるドイツの12年の年間導入量(760万キロワット)と比べても、日本がわずか9カ月で3倍近くのレベルに到達したことになる。

 そうすると、日本は太陽光で「世界一」となったと豪語できそうだ。が、事はそう単純ではない。

 実は、太陽光発電では設備認定を取得しても、発電には至っていない案件が急増しているのだ。

 12年2月末時点での公表数字を見ると、特にメガソーラーなどの非住宅用での太陽光発電で実態との乖離が顕著である。設備認定の案件が累計1101万キロワットに上るのに対し、発電に至ったのは42万キロワットと4%にも満たない。ここはまだ世界に誇れる数字にはなっていない。

「実現は半分?」との声

 こうした乖離が起きた理由の一つは「駆け込み申請」にある。

 太陽光発電の買い取り価格は12年度、1キロワット当たり42円と高額に設定されたが、13年1月を迎えるころには、すでに政府が引き下げ方針を表明していた。

 42円の買い取りは発電開始時ではなく、基本的には設備認定を取得した時点で保証される。さらに設備認定自体も、発電のための土地契約や、太陽光パネルの購入を済ましていなくても取得できる仕組みとなっている。このため、とにかく42円の時期に間に合わせたい、と年度末にかけ“認定ラッシュ”が起こったのだ。