AIが市場に加わっても「仕事」はなくならない理由

石井 もしかしたら本も、AIが読む本みたいなものが出てくるかもしれない。そうなってきた時に、僕らが考えている商売のあり方、仕事のあり方っていうものが、まるっきり変わると思うんです。

 それがいつなのかというと、シンギュラリティを超えてもう少し先だと思うんですけど、人によっては2040年、2030年、はたまた2年後だみたいに言う人もいるわけですね。

 そんな社会になった時、僕らはどんな仕事をしているのか、加藤さんにお伺いしてみたいと思っていました。

加藤 「仕事」の概念については、私はそこまで極端な変化がすぐに訪れるとは思っていないですかね。

 力重さんが言うような未来は来るかもしれないけど、人間の仕事ってすぐには変わらないというか。人口が激減するなら別ですけども。

 音楽好きなAIが誕生したとしても、それも市場におけるクラスターの1つであって、そこに“合わせた”ビジネスがある一方で、別の母集団に向けたビジネスをしてもいいんじゃないかと。メジャーな選択肢が1つ増える感覚で。

 元々あった仕事のうち、サイズがものすごく小さくなるものはあるだろうけど、ゼロにもならないのでは、説です。

石井 なるほど。主体としてのAIの登場も、市場における変化の1つにしか過ぎないという感じですね。

AIに評価される仕事は「つまらない仕事」になるのか?

石井 実際に本というコンテンツを作っている編集者としてはどう思われますか?

――AIをプラットフォームと捉えていいかわからないですが、プラットフォーム側からお金もらうみたいなシステムになった途端、本作りはつまらないものになりそうだなと思いました。すでにオンラインストア上での評価システムはありますけど、それはあくまで購入した「人間」による評価。これが、オンラインストアに搭載されたAIに評価されて、評価がいい本だけが扱われたり、お金がもらえたりするみたいになったら、僕たちはAIに向けて本を作らなきゃいけなくなる。そうなると、なんでこの文章がいいのか人間からすると全然わからないけど、こうした方がAIの評価がいいからこうする、みたいな作業になってしまうかもですよね。そんな仕事は、何も楽しくないなと思いました。

加藤 判断基準が少ない社会か、多い社会かってことですよね。「人が判断している=判断基準がいっぱいある」。文化や価値観はそれぞれバラバラですからね。

――価値観とか文化の違いであれば、「ああ、その価値観もあるよね」って共感できる部分もあると思うんですけど、人間の文化や価値観とはまったく違う、人間が読めもしない文章がAIにとっては良いみたいになってくると、もはや作業としてやるしかなくなりますからね。