ライダー氏は「米国は今も間違いなく海洋国家だ」と言い切る。だが、世界の造船市場のシェアで米国は1%にも満たず、有事の海上輸送に支障が出かねない状況だ。

 トランプ大統領も危機感を募らせている。25年4月には、「我々は事実上、もはや船を造っていない。とんでもないことだ」と述べ、造船業復活を図る考えを示した。

 だが、米国の造船業の復活には課題が山積している。深刻なのは、業界の衰退に伴って減少した熟練工をいかに確保するかということだ。

 オースタル・USAは週休3日制を導入し、熟練工には高い賃金を支払うなど、人材の囲い込みに躍起となっている。若手の育成も図っており、作業員ブラクストン・ジャレルさん(19)は「最近昇給したばかりで待遇は悪くない。しばらくこの仕事を続けるつもりだ」と話した。

 ライダー副社長は「今後2年間で2000人の雇用を増やす必要がある。製造業でも高収入で働きやすい仕事に就けるというストーリーを広めないといけない」と力説する。

アメリカの造船業の
国際競争力はほぼゼロ

 造船業の火が消えた街もある。東部メリーランド州ボルティモアでは、かつて3か所あった造船所はすべて閉鎖された。ともに栄えた製鉄所の跡地には今、米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムの施設が立つ。

「造船業は徐々に姿を消していった」。元コンサルティング会社経営のジャック・バーカートさん(81)は振り返る。バーカートさんの父親は造船所で働いていたが、まだ活気があった1960年頃に「造船は20~30年後には消えてなくなる」と予想していたという。

 造船業は、過度な保護主義とその見直しといった政策に振り回されて衰退したという面もある。

 1920年制定の「ジョーンズ法」では、米国内を運航する内航船は国内の造船所で建造することが義務づけられた。競争力のない造船所が生き残り、効率化や技術革新が妨げられ、海外勢との競争にさらされる大型商船の建造は落ち込んだ。