また、SNSは価値観のジャッジを加速させる。多くの人がそれぞれの意見を言う中で、自分と同じ意見を見つければ心強くなるし、反対意見を見ればさらに対抗する言葉を発したくなる。SNSの応酬は、自分の決断をより強固にさせていく。

 つけ加えれば、この「論争」には男女論も垣間見えた。

 男性アイドルの女性ファンが一般常識と異なる行動を選ぼうとする、というエピソードであったため、「女性は責任感がない」「好きなことだけしていたいのが女性」といった、「女性たたき」が一部で見られた。

 バズる要素を前述したが、男女の対立もSNS上では拡散しやすいトピックであることを付け加えたい。

 ちなみに、嵐のラストライブでは不法侵入者が3人逮捕されるという事件も起こった。筆者は「嵐の最終公演に侵入疑い 3人逮捕」という見出しを見たとき思わず女性3人かと思ってしまったのだが、実際に逮捕されたのは20代男性2人と70代男性で、「ライブを見たかった」「ファンだった」のだという。

 嵐のファンといえば女性だろう、というバイアスが自分にもあったのだと反省した。しかしこれをもって「男性は趣味のためなら法も犯しがち」などと言うのは言い過ぎであろうから、「妻がラストライブを優先」エピソードも、「女性は」という大きな主語に広げるべきではないだろう。

 気をつけたいのは、人は何かにつけて「自分の価値観が正しいと確認したい」生き物であることだ。だからこのように意見が割れやすいトピックは、SNSで何度でも注目を集める。その心理を利用してバズが作り出されることがある。

 今回のケースはわからないが、釣り目的の投稿も中にはあるだろうし、そうでなかったとしても論争を目にするうちに「アイドルのファンは非常識な人が多い」といったバイアスが強固になりやすい。

 他人の決断を見たときに「自分ならそうしない」と感じることは自然だ。しかし、その感覚が「だから相手は間違っている」に変わった瞬間、SNS上の論争は加速する。

「自分はそうしないけれど、相手を断罪することもしない」。分断が進むと言われる今のSNSに求められているのは、そのような中間的なポジショニングなのかもしれない。