そして12月には、出店予定だった店の向いにある、世界中にミシュランの星を持つジョエル・ロブションの店「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション・エトワール」で発表会を開催。

 メディアも多数集まり、テレビ東京の「カンブリア宮殿」でも取り上げられ、傍目にも順調なスタートを切ったかに見えました。

テナント契約がこじれて
パリでの出店が暗礁に

 しかし、その後は苦戦が続きます。大手不動産会社が所有しているビルの一角の、その商業権を持っている人から権利を買って営業する段取りでした。

 フランスで飲食店(特に酒類を出す店)を出す場合は、日本のように保健所から飲食店営業許可を取れば開業できるというものではなく、前のテナントから商業権(Fonds de commerce/フォンド・ド・コメルス)を買い取るのが一般的で、この商業権とは、設備、顧客、ライセンス、賃貸借契約、従業員など営業に関わる資産の総称なのです。

 家賃交渉については、お互いの弁護士が今までの家賃をスライドして、こういう仕切りでと口約束で話を進めていました。弁護士同士が親しかったのでわざわざ書類を作らなくても、とりあえずはメールでやりとりしているから大丈夫と聞いていました。

 ところが、ロブションでお披露目をした頃から、向こうのレスポンスが悪くなってきたのです。

 商業権を買った相手の弁護士が解任されて、別の弁護士が担当するようになると、書類の一文字が足りないとか、もっと細かい説明が必要だとか、のらりくらりで契約が進まなくなりました。我々は家賃が折り合わないのだろうと簡単に考えていました。

 すると相手の弁護士が、ビルのオーナーと交渉して200万円の家賃を150万円に下げたから、その下げた分2年分を報酬としてほしいと言い出しました。

 こちらの弁護士の話では家賃は据え置きで150万円を基礎として、おいおい詰めることになっていました。口約束とはいえ、こちらも早く営業したいから、その150万円を175万円に譲歩すればビルオーナーも納得するだろう、そう考えて一宏がパリに交渉に行ったわけです。