獺祭 会長の桜井博志氏獺祭 会長の桜井博志氏 Photo:SANKEI

アメリカでは「日本酒ブーム」が語られ、獺祭はホワイトハウスの晩餐会でも提供されるなど高い評価を受けてきた。しかし、獺祭を率いる桜井博志氏は、その熱狂に違和感を抱いていた。日本酒の品質管理や流通の実態を見れば、「ブーム」と呼ぶには程遠い状況だったからだ。なぜ獺祭は最大市場のニューヨークではなく、先にパリへの進出を決断したのか。そこには、日本酒を世界で本当に定着させるための長期戦略があった。※本稿は、獺祭 会長の桜井博志『獺祭 経営は八転び八起き』(西日本出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

ニューヨーク攻略の前に
パリに直営店を出す意味

 今も昔も高級酒といわれるジャンルで、海外で日本酒が伸びないのは品質標準がないからです。保存状態が悪くて劣化した酒が店頭に並ぶため、それが日本酒の品質だと受け止められてしまうのです。

 上等なワインは温度管理をして大事に保管しても、日本酒は常温で置いておく。日本酒は古くなっても悪くならない、と思い込んでいる店もありました。

 ニューヨークのように、シンボリックな店が先行して、よい状態の日本酒を提供して、結果として全体の市場の酒の価値を底上げしているような理想的な状態は珍しく、本当によい状態の日本酒を海外の流通業者も飲食店も知らないことが大きな問題でした。

 そこで、パリに直接「獺祭」を飲めて買える店をオープンすることにしました。

 ニューヨークに力を入れているのに、何故パリなのか……。

 売上げが大きいのはアメリカです。その中でもニューヨークが一番大きな市場です。ところが、ニューヨークを見ているとフランスの影響が非常に大きいのです。