獺祭の酒造りは杜氏が伝統的に行う「皆が寄り集まって造る」方式ではなく、パート毎に分かれて作業する分業制です。仕上がりの精度を重視するため、どんどん人の重要性が増してきてこの人数なのです。

ロボットは90点を取れるが
獺祭には95点が求められる

 もう少し社員の作業負担を楽にしてやりたい。作業手順も工夫したら洗米担当者の腰の負担も減るんじゃないか。麹の箱や床の高さも本当にこれでいいのか。機器類もよいものがあるんじゃないか。AIやロボットを使えばそれができるんじゃないかと、様々な工夫や機器の導入をしてきましたがなかなかうまくいきませんでした。

 例えば洗米ロボット。人間と同程度の繊細なコントロール能力があるということで導入しました。優秀です。しかし残念ながら人間なら米の状況を見ながら即座にコントロールし始めるのに、機械はある一定時間が経過しないと対応が始まりません。

 人間が機械に合わせてやればいいのではと思って色々工夫しましたが、なかなかうまくいきません。熟練の人間が95点の作業をするとした時、機械は工夫によれば85点が90点までは上がりますがそれ以上ではありません。

 実は酒造りが複雑になってきているのです。

 40年50年前のように酔うために酒を飲むのではなく、食事を美味しく楽しむためという、口の肥えたお客様の満足を追いかけるためには、作業方式もどんどん変えていかなければなりません。結果として仕事量が増え、必要な製造人員が増えていきます。

 しかも獺祭の勝ちパターンは製造コストを経営上許される限りまで引き上げて、競争優位な品質を獲得する。その品質を背景にお客様の評価を高め、売上げを上げていく、というものです。

 これまで製造業の常識だった、製造コストを下げて粗利益を高め、それを広告やマーケティングにつぎ込んで勝ち組企業になる、という法則と全く違うのです。だから米も高い山田錦にこだわり、必要製造人員も増え続けるのです。