本物の富裕層の座席選びは、まさにこの移行を映し出しているように思います。判断の基準が、「自分はどう見えるか」から「自分には何が必要か」へと、外側から内側へ移っているのです。

 そして、この内側に移った基準は、座席だけでなく、住まいや車、装い、人付き合いといった、生活のあらゆる選択に一貫して表れます。

大切なのは「選ばない自由」を
持っているか

 ここから、富裕層ではない私たちにも学べることがあります。

 本物の豊かさとは、最上級のものを「選べること」ではなく、むしろ最上級のものを「選ばなくてもいられること」なのかもしれません。

 常に一番上の席や、一番高いものを選ばなければ気持ちが落ち着かないとすれば、それは裏を返せば、まだ何かを証明し続けている状態だともいえるからです。

 これは、ビジネスの場面にもそのまま当てはまります。実力以上に見せようとする肩書き、必要以上に立派なオフィス、過剰な接待。それらが本当に成果のために必要なものなのか、それとも自分を大きく見せるためのものなのか。一度立ち止まって見極めることには、大きな意味があります。

 見栄のための支出は、一時的に自分を安心させてくれますが、その安心は長くは続きません。次にまた、より大きな証明を求めてしまうからです。

 次に大きな買い物をするときや、人の目に触れる選択をするとき、一度だけ、ご自身にこう問いかけてみてください。

「これは、誰かに見せるための選択だろうか。それとも、自分自身のための選択だろうか」――。

 その問いに、迷いなく「自分のためだ」と答えられたとき、私たちは一つ、本物の豊かさに近づいているのだと思います。座席選びとは、私たち自身の内面を映し出す、小さな鏡なのです。