
農協の経営が急激に悪化している。金利の上昇によって価格が下落した国債の“損切り”を迫られたり、農家から集めたコメの値段が下がって農業関連事業が減益になったりして、赤字に転落する農協が相次いでいるのだ。長期連載『儲かる農業 JA・豪農・アグリビジネス大激変』内の特集『全国455JA“赤字&消滅”危険度ランキング【26年版】 金利上昇とコメ暴落で大淘汰!?』の本稿では、債券とコメの暴落ショックに耐えられない可能性が高い全国の農協を、独自試算であぶり出した。試算の結果、対象となった455JA中、109JAが5年後に5億円以上の減益となり、200JAが赤字に転落することが分かった。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文、データ分析 小海敬義)
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債券の売却損で121億円超の赤字に沈んだJAも
北海道と本州以南で、農協の格差が拡大!
金利の上昇に伴って暴落した長期国債の“損切り”を迫られ、赤字に転落する農協が続出している。
保有国債の暴落などによる減益ショックに耐えるための基礎体力がない農協を明らかにするため、ダイヤモンド編集部は、農協ごとの信用事業(銀行業務)、共済(保険)事業などの減益額や人件費の増加額を独自にシミュレーションした。試算の結果、455JA中、109JAが5年後に5億円以上の減益となり、200JAが赤字に転落する厳しい実態が判明した。
巨額損失に陥る農協が急拡大したのは2024年度だった。債券の“損切り”を行って、内部留保が大幅に減少する農協が相次いだのだ。具体的には、愛媛県のJAおちいまばりが有価証券の売却損を48.5億円計上(利益剰余金は前年度比77%減)、JAみやぎ登米が同37.6億円計上(同79%減)といったケースだ。
25年度においても、多数の農協が同様の理由で赤字に転落している。
25年度に巨額赤字を計上した農協の代表格が、静岡県のJA大井川だ。国債の売却損を計上し、同県内の農協として過去最大となる121億円超の最終赤字(前年度は連結で3億6876万円の黒字)に陥ったのだ。JA大井川の25年3月末現在のその他有価証券の評価損額は146億円。それから6カ月後の9月末現在には同164億円まで膨らんでいた。同農協は、ダイヤモンド編集部が今年2月に公表した、国債の「巨額損失リスク」農協ランキングで全国ワースト2位であり、要注意な農協だった(同ランキングの詳細は『【国債の「巨額損失リスク」農協ランキング完全版・ワースト455JA】有価証券の売却損で、内部留保が激減しかねない“危険水域”の42農協を一挙公開!』参照)。
赤字に沈んだ農協は、JA大井川だけではない。同一県内の農協が合併して誕生した大型農協においても有価証券の運用失敗によって損失が発生している。JA福井県は25年度、26億5109万円の最終赤字(前年度は連結で3210万円の赤字)。25年4月に和歌山県内の農協が合併して誕生したJAわかやまは77億1200万円の最終赤字。JA徳島県は40億7800万円の最終赤字(前年度は5億5100万円の赤字)に沈んだ。
25年度に赤字に転落した農協については、『【独自】農協が総計700億円超の損失を計上、赤字転落の53JAを一挙公開!長期金利上昇による保有債券の値下がりで経営が悪化、救済合併を模索する緊急事態』で詳報している。
農協にとっての不安要素は債券の暴落にとどまらない。今後、米価の下落が経営を直撃しそうだ。すでに、25年産米の販売の苦戦によって1億円程度の減益になった農協もある。国債に加え、コメでも損失を覚悟した売却を強いられれば、経営はより厳しくなる。
次ページでは、減益による経営へのインパクトが大きい全国の農協をリストアップした「JA“赤字&消滅”危険度ランキング完全版」を公開するとともに、巨額損失に陥る可能性が高いハイリスクな農協の経営を徹底分析する。
過去には、経営が悪化して近隣の農協に救済合併されたり、組合員の出資金を1口分1000円まで大幅に減額したりした農協が存在し、いずれのケースでも出資者や取引先に多大な悪影響を及ぼした。農協ごとのリスクの算定方法を、経営環境の変化に応じて刷新した結果、明らかになった“消滅危機”農協はどこか。







