冨山によれば、未来予測の研究者でもない、一介のサラリーマンである出井が、インターネットの本質を、デジタル技術の本質を、ネットワークの本質を理解していたことこそが、驚異的なことだと何度も繰り返した。
日本の電機メーカーの中で、ソニーは、たとえばトリニトロンカラーテレビやウォークマンなど、時代を画する製品を生み出してきただけに、俗に言う“白物家電”を中心とした他の電機メーカーとは異なり、“イノベーティブな”“斬新な”“他とは違う”会社と思われていた。誰もが“ソニーならワクワクするモノを創ってくれる”と期待し、ソニー自身もそれを売りにし、自負もしてきた。
つまり、ソニーは他のメーカーとは別格であり、エレクトロニクスの夢を見せ続けてくれる会社だと信じられていた。まさに“ソニー神話”である。
ネットワークビジネスが壊した
大量生産・大量消費モデル
しかし、冨山の見立ては当時から違っていた。
「たしかにそうした面もありますが、本質的にはソニーは、他の電機メーカーと変わりません」
本質は同じとはどういうことか。冨山の見解はこうだ。
トリニトロンカラーテレビやウォークマンはソニーを代表する製品で、ソニーの歴史そのものとも言える製品でもある。こうした世界的にソニーの名を知らしめた画期的な製品も、白物家電と同じでアナログ技術の集積によって出来上がり、大量生産・大量消費で利益を上げていた。だから、ソニーは“イノベーション”を起こす会社ではなく、“インベンション”を起こす会社、つまり、「発明を商品化できる会社」だったという。
「ソニーのビジネスモデルは、他の電機メーカーの松下電器や三洋電機(現、パナソニックの子会社)、シャープ(現、フォックスコンの子会社)となんら変わらない。オーディオ、ビジュアル機器の大量生産、大量消費のモデルだったんですよ。かつてのソニーのビジネスモデルは」
大量生産、大量消費の時代、企業はより良い製品を売ることに注力し、消費者との関係は売った時点で終わっていた。







